- 第260回 -  筆者 中村 達


『最新アメリカのアウトドア人口』

 「2009年版米国アウトドアレジャー統計」によると、不況だというのにほとんどのアクティビィティで、参加人口が増えている。
 たとえば、バックパッキング(1泊以上)の参加人口は790万人で、07年より19%近く増加した。ハイキングは3,250万人で8.5%。車を使ったキャンピングは、1,650万人で2.2%。車で出かけたキャンプ人口(国内ではオートキャンプというが、米国ではその言葉は使われていない)は、3,370万人で7.4%それぞれ増加した。
 さらに、特筆されるのが冬のアウトドアアクティビティの増加率だ。たとえば、いわゆるアルパインスキー(ゲレンデスキー)こそ、ほぼ横ばいのおよそ1,000万人だったが、クロカンは385万人で9%増。スノボーは716万人で11%ほど増加している。中でもスノーシューイングの参加人口は292万人で、22%も増やしている。テレマークスキー人口も140万人と、他のアクティビティに比べて少ないものの22%以上も増加した。

 これらのデータの中で、さらに注目しなければならないのが、参加人口の年齢構成だろう。ほとんどのアクティビティで25歳から44歳がトップを占め、6歳から17歳がそれに続いている。もちろんハイキングやバードウォッチングなどでは、45歳以上の中高年がトップだが、アドレナリンスポーツともいわれるアウトドアアクティビティでは、当然のように若い人たちの参加者が多い。
 また、米国のアウトドアアクティビティのデータをさらに細かく見ると、アドベンチャーレース、カヌー、BMX、ラフティング、トレイルランニングなどというカテゴリーがあり、いずれも最低でも数百万人の参加人口をかかえている。また、カヤックなどは、レクレーション、海、ホワイトウォーターと細かく分類したデータがとられており、しっかり認知されている。

 欧米では不況になればアウトドアズはストロングになる、という定説が統計で証明された、といったところだろう。と同時にアメリカンアウトドアズが、国民の間に広く定着しているのがよくわかる。このようなアウトドア先進国には、自然体験などいう単語はないようだ。

 一方、わが国でもレジャー白書や、オートキャンプ白書の2009年度版が発表されたが、どの調査データでも参加者数は減少している。たとえばオートキャンプの参加人口は、昨年度の720万人から705万人に、僅かだが減っている。登山人口は570万人で、ここしばらく減少傾向が続いている。ただ、日本では米国のような詳細なデータはなく、たとえば登山は、登山という項目で一括りされているのでトレンドはつかみにくい。
 国内のアウトドアアクティビティの人口について、よくたずねられるのだが、実のところデータが非常に少ないので、極端に言えば推計に推計を重ね、さらに勘に頼らざるを得ないところもある。

 日本と比較しても意味のないことかもしれないが、国内ではアウトドアアパレル(ファッション)が、若者たち、中でも女性の間でちょっとしたブームが起こっている。これをライフスタイルマーケットと言うらしい。こんな状況を見ていると、リアルなアウトドアライフスタイルが定着するには、まだまだ時間がかかりそうだ。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト。
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際アウトドア専門学校顧問、NPO法人比良比叡自然学校常務理事、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。