- 第252回 -  筆者 中村 達


『今年も富士登山が人気?』

 富士山は世界遺産認定の論議や、ゴミ問題などで注目度がアップしている。今年も夏休みを前にして、富士登山のコピーが目につきはじめた。富士登山はすっかり夏の風物詩になったようだ。それに便乗するかのように、アウトドア業界も富士登山キャンペーンをはじめ、ショップなどでは富士登山向きスタイルがディスプレイされている。先日届いたアウトドア通販カタログにも、富士登山を勧めるチラシが挿入されていた。スポーツ量販店の新聞折り込み広告にも、富士登山用具グッズが紹介されている。

 そんなこんなで、今年の夏も富士山におおぜいの人たちが押し寄せることだろう。ちなにみに昨年は、山梨県側から24万7千人が、静岡県側からは18万6千人の登山客が訪れたそうだ。一昨年対比で20%ほど増加した。これだけの登山客が来れば、ゴミ問題やし尿の処理はどうなっているのか、気になる向きも多いことだろう。たとえば、トイレットペーパーだって、仮に一人当たり1mを使ったとして、その距離はおよそ430kmにもなる。
 ひと夏で、富士山だけで京都~東京間の距離に相当するトイレットペーパーが使われる計算だ。もちろん仮定のお話しではあるが・・・。
 最近ではバイオトイレなどの設置もすすんで、かつての垂れ流しもなくなり、ほぼトイレ問題は解消したといわれている。が、登山客の増加に処理が追いつくのか、気にかかるところではある。

 先日、信州の宿で出会った米国登山専門誌の編集長も、来日してすぐに富士山に登ってきたと言っていた。このアメリカ人だけでなく外国人観光客にとって、富士山登山が目的のひとつになっていることも多い。また、知人や友人でも富士山に登りたいという人は相当数いる。
 富士山は老若男女を問わず、登山の経験があるなしに関わらず、日本人なら一度は登ってみたいと思う。だが、この富士登山をきっかけに、登山やトレッキングを始めたという人たちは少数で、登山人口増加のトリガーにはなっていない。特に、若い人たちはその傾向がつよい。

 さて、富士山は標高が3,776mあり、多少なりとも高山病の症状が出ることがある。山頂に近くなるにつれ空気が薄いと感じるし、倦怠感、頭痛、吐き気などをもようすこともしばしばだ。程度の差こそあれ、そんな症状を訴える登山客は多い。特に子どもたちや高齢者は注意が必要だ。私の経験では、2,500mあたりで空気が薄いと感じはじめ、3,000mを過ぎると少し息苦しくなって、3,500mあたりでは登るスピードが極端に落ちた。そんなことで、夏の富士山の登頂率は意外に低いと、知人の登山家から聞いた。氏の推測では30%~40%だそうだ。

 そこでこの夏、富士山登山を計画している人にワンポイントアドバイス。
 まず、高度に慣れ安全に登るには、途中の山小屋(予約が必要)で仮眠することをおすすめする。これで山頂への登りは、少しは楽になると思う。
 また、地上と山頂では気温が20℃以上違う。真夏でも山頂は氷点下になることもあり、防寒のためにフリースやセーター、あるいはダウンなどを用意するといい。防風のためにパーカーも必要だ。
 富士山は独立峰で風も強いし、天候の変化も激しい。レインウェアは必携だ。ビニールのカッパなどでは蒸れて不快な思いをするので、少々高くても防水透湿素材のレインウェアを持参したい。高いといっても1万円も出せば、良質のものが手に入る。パーカー代わりにもなるし、この先長く使える。


 靴はできればしっかりしたトレッキングシューズなどを履きたい。帽子、手袋(ポリエステル系かウールのもの、綿の軍手はダメ)なども必携だ。登山用ストックも下山時には有効だ。また、酸素ボンベも500円前後で市販されているので、用意しておくと安心だ。水(飲料水)、食料、ファーストエイドキッド、ヘッドランプ(予備電池)、タオル、チリ紙、サングラス、着替え用の下着、などもお忘れなく。その他、細々としたものは、通常のトレッキングやハイキングで持参するものを用意すればいい。

 何かと話題になる富士山ではあるが、もし、「富士山に登りたいのだが?」とたずねられれば、「一度は登ったほうがいい」と、答えるようにしている。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト。
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際アウトドア専門学校顧問、NPO法人比良比叡自然学校常務理事、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。