- 第242回 -  筆者 中村 達


『雪不足報道でスキー場は大迷惑』

 今年は暖冬でスキー場は雪不足、なんていうメディアの報道で、すっかり雪が少ないと思っていた。そう思い込むと恐ろしいもので、中央道を走っていて、アルプスの山々に時折目をやると、なんだか雪が少ないような気がする。同乗者に山の雪は少ない?と聞いてみると、少ないと思いますと返ってきた。
 確かに今年は、幾分降雪量は少ない。パーキングエリアで周辺の山を見ると、やっぱり少ないような気がする。

 ところがスキー場のある地域に近づくと、スタッドレスタイヤを履いていてよかったと思った。訪れた八ヶ岳山麓のスキー場は、どこも滑走は可能だった、それに前日の夜に雪が降ったので、午前中は新雪の滑りを楽しむことができた。
 当地のホテルのオーナーは、マスコミがスキー場は雪不足と捲し立てるので、スキー客が滑走できないものと信じ込んで、客足が激減していると怒りを隠さない。もちろん金融不況のせいもある。これも、煽り過ぎでお客が自主規制しているのではと訝る。
 確かにスキー離れは、若者たちほど激しいし、未来は決して明るくはない。そのうえ、こんな風だからスキー関係者は踏んだり蹴ったりの心境だろう。

 バブル経済が崩壊した折、友人のニュージーランド人が日本は不況というけれど、走っている車はピカピカだし、繁華街は買い物客であふれているじゃないか。欧米だと不況になると、街は失業者だらけで、車もポンコツが走っているよ、と不思議の国の感想を語っていた。実体経済はかなり深刻だと言われているが、果たしてどうなのだろう。

 たまたま泊まったロッジに、横浜で暮らすスイス人の子どもたちがスキーに来ていた。この1週間は日本のスイス人学校でも本国と同様にスキーウィークとかで、スキーをするための休暇があるそうだ。子どもたちは、両親の友人夫婦に連れられてきていた。スイスでは国技ともいうべきスキーを、国をあげて育成支援している。アウトドアアクティビティに限らず、スポーツの振興は子どもの頃からの体験と継続的な支援が重要だ。スイス人の子どもたちの様子だけで、すべてが分かる訳ではないが、国家としての取り組みが垣間みられたような気がした。
 子どもたちは、ヘルメットをかぶって、嬉々としてインストラクターの後を滑って行った。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト。
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際アウトドア専門学校顧問、NPO法人比良比叡自然学校常務理事、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。