- 第226回 -  筆者 中村 達


『またまた、レインウェアのこと』

 8月の末、長野県のある街でウォーキング大会があった。夜を徹して歩く大会で、標高2,000mの峠を越え35kmほどの距離を歩き通す、ハードなものだ。それでも子どもたちも含めて、約300名の参加者があった。
 夜半、雨が降り出した。その雨は徐々に激しくなった。ゲリラ豪雨とまではいかないが、山中では横殴りの雨は厳しい。参加者はずぶ濡れになった。夏山でも雨が降ると体感気温は下がる。こんな天気になると、レインウェアの良否が行動を左右する。中間地点で大会の様子を見物させてもらったが、しっかりしたレインウェアを着ている参加者と、そうでない参加者の差がはっきり出ているように思われた。
 ビニール製の雨具か、ナイロン製のパーカーが多かったようだ。防水透湿性にすぐれたレインウェアを着込んでいる参加者もあったが少数のように見えた。

 この夏、槍が岳からの下山途中に大雨に見舞われたが、北アルプスの山中では、さすがに登山者はいいレインウェアを身につけていた。だが、上高地に近づくにつれ、観光客が多くなり、すれ違う人たちの雨対策は大半がお粗末としか言いようがなく、特に下半身がずぶ濡れの様子でお気の毒だった。雨対策やレインウェアについての認識は、まだまだ低いようだ。
 アウトドア用のレインウェアは、性能が飛躍的に向上している。機能としての防水性はもちろん、蒸れにくいことも当たり前になっている。あまり目立たないことだが、素材性能の進化は、革命的ですらあると思う。そして、価格も1万円程度からと、リーズナブルになった。この1万円が高いと考えるか、安いと見るかは見解の違いだろうが、激しい雨に打たれた現場では、きっと安いと感じるに違いない。

 それに、良質なレインウェアは、パーカー代わりとして十二分に着まわしができるのでアウトドアでは重宝する。ちょっとオーバーかもしれないが、万能アウターといえる。もちろん旅行や街中でもひとつあれば便利だ。最近では子ども用もラインナップされてきている。本来は子どもたちにこそ、いいレインウェアを着せるべきだと思う。
 10年ほど前、米国ニューイングランドでトレッキングに行く際、同行してくれた山岳ガイドが、「ゴアテックスのウェアは持っているだろうな!」と、私のパックを覗き込んだ。いまやアウトドアでは欠かすことの出来ないアイテムとなっている。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト。
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際アウトドア専門学校顧問、NPO法人比良比叡自然学校常務理事、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。