![]() ![]() ![]() - 第216回 - 筆者 中村 達
『携帯電話とアウトドア』 携帯電話を子どもに持たせるかどうか、論議をよんでいる。便利なものであっても、使いようによっては諸刃の剣となる典型的な例だろう。子どもの携帯電話は、親の立場からすれば安全のための道具のはずが、使われ方によっては防御どころか、逆に被害を受ける凶器と化してしまうことがある。携帯電話はまだまだ進化の過程にある、と言えるのだろう。 ところで、アウトドアでは携帯電話が大変便利な装備になっている。一昔前のことだが、携帯電話が普及し始めた頃、「私遭難しています!」なんていう電話が山小屋にかかり、すぐに救助されたというお話がある。箸袋に印刷されていた山小屋の電話番号が役に立った。近ごろの遭難事故の報道を見ても、携帯電話が救助の手立てになっていることが多い。 ![]() 通信事情が良くなってくるにつれ、怖いのが携帯電話への過信だろう。いくら通信可能エリアが広くなったとはいえ、国土の68%が山岳丘陵地という地勢ではフルカバーは難しい。携帯電話を持って行くなら、立ち止まって時々通信状態を確認する必要がある。どのポイントだったら通じるのか、通じないのかをチェックしておくのも、リーダーの仕事になってきた。 ともかく、通信事情がよくなるにつれ、どこにいても連絡がつくようになってきた。ちょっとした打ち合わせもできる。特にメールであれば、通信可能なポイントを探せ出せれば、少々のことは対応が可能だ。アウトドアで遊んでいようが、森の中を散策していようが、山登りをしていようが、いつでもどこでも情報が入るというのは、こと日本人のメンタリティーにあっている。たとえ休暇で仕事を休んでいても、会社人間にとっては職場とのコミニュケーションができる、というのが心安らぐらしい。「何か連絡入っていないか?」なんて部下に尋ねることで、アイデンティティが保たれる。携帯電話もインターネットも、どこでも仕事ができるというのが安心で、この上なく重宝なのだ。そんなことを米国人のアウトドアズマンにいうと、目を丸くしてアウトドアで仕事なんてまっぴらだと言い放った。 ![]() ニジマスが水面で跳ねるのをなすがままに、無様な格好で通話をする羽目になった。 (次回へつづく)
■バックナンバー ■筆者紹介 中村 達(なかむら とおる) 1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト。 NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際アウトドア専門学校顧問、NPO法人比良比叡自然学校常務理事、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。 生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。 |