![]() ![]() ![]() - 第206回 - 筆者 中村 達
『アウトドアのモノローグ フットウェア』 その人の自然体験度、つまりアウトドア度は足元を見れば分かる。具体的には、いくつアウトドア用のフットウェアを持っているかが尺度になる。その人の遊び度を測るスケールでもある。もちろんただ買っただけというのは論外だ。 アウトドア用のフットウェアは、登山用、トレッキング用、ハイキング用、ウォーキング用、クライミング用、それに最近ではマウンテンランニング用などというのがある。登山用とトレッキング用、はたまたハイキング用との違いは曖昧であるが、バックパッカーの加藤則芳氏によると、最近、米国ではトレッカーといわず、ハイカーと呼んでいるらしい。3,500kmのアパラチアントレイルを完歩したひとは、スルーハイカーとして称えられるという。だから、トレッキング用とハイキング用との違いは、言葉としてあっても製品の違いはないように思う。 それはともかく、厳冬期の雪山で使用する場合や、重い荷物を背負って長期期間の縦走でもしない限り、トレッキングシューズが一足あれば、こと足りるのではないと思う。理想的には用途別に揃えておくことだが、よほどの愛好家でもない限り、まず必要はない。 形状はロウカットとハイカットのモデルがあるが、一般的にはハイカットモデルのほうが、足首を保護してくれるので最初の一足としてはお薦めだ。素材は、皮革は少なくなって、耐摩耗性や耐久性などを強化したナイロン製が主流で、なおかつ撥水性と吸汗性(透湿性)のあるフィルムがラミネートしてある製品が多い。水に強く、なおかつ蒸れないというのが当たり前のようになっている。もちろん歩きやすさや、長時間歩いても疲れが軽減するような素材や形状が工夫されている。 ![]() また、プラスチックのスキーブーツは加水分解に悩まされる。突然ブーツがバラバラに分解してしまうことがある。プラスチックの表面に薄く白い粉が吹き出ているようであれば、加水分解が始まっているのだそうだ。山岳スキー用のブーツがそんな状態であれば危険信号だ。実は、フランスのシャモニで、7年ほど前に買い求めたツアースキー用のブーツが薄っすらと白くなった。数度しか履いていないブーツだが、専門店のスタッフに驚かされて新しいのを買い求めた。 アウトドア用のフットウェアの選び方だが、独断と偏見で言えば、性能と履き心地は価格に比例すると思う。もちろん足に合わないと、いくら高くてもどうしようもないのだが、快適な歩きがしたいなら、少々高くても「歩きはアウトドアの基本」だと思って、お金を惜しまないことだ。と言っても、せいぜい2万円も出せばいいのが手に入る。 私が大学生の時にはじめて購入したドイツ製の登山靴は3万円もした。アルバイト代が吹っ飛んだ。もう40年近くも昔のお話だが、考えてみると世の中のモノは全てが値上がりしているのに、登山靴やアウトドアグッズはさほど高くなっていないように思う。むしろ安くなっているものが多い。ただ、リーズナブルになっているアウトドア用のフットウェアを履いて、ウェアを着て、そしてグッズを持って自然に出かける若者達が、極端に少ないのが残念なことだ。その反面、街中でディパックをお尻のあたりまでずらして背負っている若者達を数多く見かけるが、何とかならないものだろうか。 (次回へつづく)
■バックナンバー ■筆者紹介 中村 達(なかむら とおる) 1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト。 NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際アウトドア専門学校顧問、NPO法人比良比叡自然学校常務理事、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。 生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。 |