- 第205回 -  筆者 中村 達


『アウトドアのモノローグ リュックサック』

 「どんなリュックサックを買えばいいですか?」なんていう質問をよく受ける。おもにご近所の中高年の人たちからだ。近くの山を歩きたいのだが、何をどうしていいのか分からないというのがその理由らしい。そんな時は、具体的なブランドを何点か教えた上で、性能と機能はある程度価格に比例するので、少々高くても一生モノと考えて買うようにとアドバイスしている。ただ、あるメーカーの見解によると、リュックサックの買い替えは13年ほどだそうなので、中高年がこれから買い求めるとすれば、耐久性から考えると必然的に一生モノになる?
 ともかくウォーキングブームと団塊の世代のリタイアがはじまって、ハイキングやトレッキングなどのニーズが出てきているのだろう。私が住んでいる田舎町でも、ちょっとした中高年ハイキングブームが起こっている。
 いま、アウトドアショップや登山用品専門店に行けば、驚くほどの種類、ブランドが並んでいる。日帰り程度であれば、25~30Lのディパックがあれば十分だ。有名ブランドであれば、どれでもさして変らないというのが私の見解だが、この有名ブランドというのがややこしい。何を指して有名か、一流かを決めるのは難しくもある。ただ、アウトドアで長く使いたいのなら、専門メーカーのものを選択すべきだというのが通説だ。このあたりは、店頭でスタッフに尋ねるといい。アウトドアブランドのものは、確かに価格は高いが耐久性や機能性に差がある。背の部分のパットの形状や素材が、汗が溜まらないように通気性に工夫が凝らされたり、撥水力もある。そして、担ぎやすく、パッキングしても型崩れしないようにデザインされている。何より縫製がしっかりしていて、価格に見合う機能は備えている。
 だからと言って、1,000円のディパックが壊れたというのは聞いたことはないし、見たこともない。が、私が長年愛用しているアウトドアブランドのディパックは、いまだなんともないし、びくともしない。担ぎやすく、デザインにもあきがこない。このあたりが本物?の証明かも知れない。
 最近では、リュックサックは大半が中国やインドネシア、ベトナムなどで縫製されている。ブランドは異なるが、縫製は同じ工場などという話を耳にする。生地やパーツも同じで、ただ、ブランドだけが異なることもあるようだ。よく似たデザインばかりなのもそのせいだろう。

 結局、好みで選べばそれでOKなのだが、私が選ぶ基準はシンプルであること。余計なものは付いていないことだ。近ごろのディパックやリュックサックは、やたらいろいろなものがぶら下がっていたり、メッシュ状のポケットがついていたり、ゴムバンドがぶら下がっていたりと、何に使うのかよく分からないものが沢山ついている。あるメーカーの展示会で、この紐は何に使うの?と質問すると、デザイン的なものですとの返答に驚いたことがあった。そんなセンスでモノを造るなよ、と言いたくなった。
 仕事柄というのはやや言い訳だがリュックフェチ、正確には袋物フェチだ。いくら持っているのかよく分からない。メーカーからいただく試用品や海外で買い求めたもの、衝動買いしたものなど、かなりの数にのぼる。つい先日も、なぜか田舎のスーパーに老舗のアメリカブランドのディパックが、なんと市価の2掛け以下でワゴンで売られていた。思わず買い求めた。そんな話をしていると、ガレージセールをしてくださいと、近所のオバサンに言われてしまった。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト。
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際アウトドア専門学校顧問、NPO法人比良比叡自然学校常務理事、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。