− 第204回 −  筆者 中村 達


『幼少期の自然体験活動』

 「幼少期の自然体験活動を考える」というシンポジウムが、東京で開催された。
 幼稚園児の自然体験活動がいかに大切であるか、というのがこのシンポの結論であった。幼少期の自然体験活動を積極的に行っている幼稚園の先生たち、関係者がパネリストとして発言していた。聞いていて自然体験活動の現状が、抱える問題が垣間見えてきた。

 最近では、自然体験に参加する子どもたちの年齢が下がってきたらしい。正確には、自然学校に参加する子どもたちが、総じて低年齢化してきたという。その理由は定かではないが、母親達の意識の違いだとする意見もあった。
 もうひとつ、指導者が不足していることだ。幼稚園や保育園の先生達は、特別に自然体験活動の指導を受けたわけでなく、経験も少ない。虫を見て、「キャー」と騒ぐ先生も多いらしい。また、先生達の日常は多忙を極め、自然体験活動の研修を受けるどころではない。さらに、例え研修会に参加できたとしても、穴が開いた授業や保育時間をカバーする手立てがない。臨時の先生を雇えばいいのだが、それには人件費がダブルで必要になる、などいう課題もある。予算もない、人材も少ないという状況だ。

 半世紀以上も昔のことになるが、私が幼稚園児の頃は、自然体験などといわなくても、幼稚園までの往復の道のりの全てが、体験活動のフィールドだった。田んぼや畑の畦道を通り、蛙を捕まえたり、トンボを追ったり、ザリガニをとったりと、ワクワクするシーンが連続していた。野壷(肥溜め)に、落ちてしまう友達もたくさんいた。京都市内でもそんな感じだった。
 それがいまでは安全のためだろうが、幼稚園は送迎バスが当たり前だし、外遊びをする子どもたちも非常に少なくなった。おそらく家でTVゲームでもしているのだろう。

 大学生は本を読まなくなった、という調査結果が発表されたり、OECDの中では学力が低迷していたり、時限は違うが環境問題で日本は世界中から袋叩きにあったりなどと、気が滅入ってしまうことばかりだ。つまるところ結局は、ライフスタイルの問題だと思ってしまうのだ。自然体験が日常的に行なうことができるライフスタイルや環境があれば、思考体系もおのずから異なってくる。無菌状態の隔離された環境の中で育ち、生活し続けると、どうしてもライフスタイルは内向きなるのではと思う。
 「休みはどう過ごすの?」という問いに「キャンプ」などと答えられる子どもたちは、果たして何人いるのだろう。欧米では、多くの子どもたちが「キャンプ!」と答えてくれるそうだ。そして多くの大人たちも「ピクニック」と声をあげるのだ。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアコンセプター・ジャーナリスト。
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際アウトドア専門学校顧問、NPO法人比良比叡自然学校常務理事、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。