- 第201回 -  筆者 中村 達


『スキー・スノボーの人口』

 昨年末から正月にかけて、各地で雪が降った。スキー場も大半が滑走可能となってスキー関係者はホッとしている。お正月にどの程度スキー場が賑わったか、まだ詳しいデータは見ていないが、積雪があったところはまずまずだったそうだ。ただ、昨シーズンよかったところでも、今シーズンはいまひとつというスキー場もあるらしい。これは、降雪量に起因する。つまり、スキー場はまさにお天気次第で、たっぷり降ればスキーヤーやスノーボーダーは増える。積雪量が少なければ、お客は確実に減少する。
 また、都市近くのスキー場が滑走可能となれば、遠方のスキー場は客足が遠のきがちになる。ただ、問題なのはスキー人口の絶対数の減少だろう。最盛期の50%というのが通説である。それでも、スキー人口はスノボー人口とあわせて約1,200万人(2005年)だそうだ。ただ、私個人としては、この数字をさほど信じてはいない。なぜなら、例えば米国のスキー人口はスノボーとあわせて約1,150万人(2006年)で、これにクロカン人口の265万人が加わる。感覚的にではあるがウィンターアクティビティー人口が、米国より多いとはとても想像できないからだ。
が、百歩譲ったとしても、日本は10人にひとりがスノースポーツを楽しんでいるという、ものすごいスキー・スノボー人口をもつ国である。ほんとかいな?と、私でなくても疑いたくなる数字である。

 実は、この国にはスポーツに関係するデータ、特に参加人口などの統計データが非常に少ない。レジャー白書があるにはあるが、例えば自然体験人口やアウトドア人口などは、調査項目にない。登山人口はあっても定義がされていないので、ハイキングやトレッキングとの違いが分からないなど、データとしては不満が残る。ライフスタイルの多様化などによって、遊びの価値観が大きく変化して、カテゴリーもかなり細かくなってきているので、それぞれの専門機関やシンクタンクあるいは研究所などで、しっかりとしたデータを集積することが必要だと思う。
 1,200万人ものスキー・スノボーの人口があるとされて、なぜ、盛り上がらないのか、用具やウェアが思うように売れないのか、スキー場の閉鎖が相次ぐのか、若者達がなぜスキーをしないのか、スキー修学旅行はなぜ減少したのか・・・・・。観念的な理屈だけでなく、確証あるデータに裏打ちされた考察が必要だと考える。
 間もなく公開される、スキー映画『銀色のシーズン』でスキーがブレイク、などという期待があるようだが、基盤がなければ一時のブームでおしまい、なんてことはこれまでにもたくさんあった。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアコンセプター・ジャーナリスト。
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際アウトドア専門学校顧問、NPO法人比良比叡自然学校常務理事、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。