- 第184回 -  筆者 中村 達


『アウトドアショッピングに見るトレンド』

 夏山シーズンを直前にして、登山やアウトドア用具の専門店をのぞくことが多くなった。
 たいていの用具・道具類は持っているので、さほど買い足すものはないのだが、ガスボンベや消耗品は、少し多めにストックしておくことにしている。先日は、カメラ用のレインカバーを、衝動的に買ってしまった。
 最近は、かつてのような小さな専門店は少なくなって、量販店や郊外型の大型店が中心だから、品揃えも多くなった。ブラブラと店内を見てまわっていると、足らないもの、あると便利なものが見つかるので、それなりに少しは楽しい。しかし、アルバイト店員が多いので、専門的な質問には的確な回答がかえってこないこともある。

 相変わらず、これらの専門店は中高年登山向きが主力で、客層もそんな感じだ。若者がなぜ山に行かないかには、様々な理由があるが、あの山歩きファッションが嫌だからと聞いたことがある。言われてみれば確かに、どの山に登っても、例外はあるものの、中高年登山者のファッションは似たようなものに思う。グレーやベージュ系のパンツにチェック柄のシャツ。それにベストが定番。ヨーロッパの有名ブランドのリュックサックに、T型のストック。なぜか最近は、夏でもスパッツの着用者が多い。ズボンが汚れないかららしい。ウェストバッグの愛好者も見かける。
 専門店には、この種のものが沢山並んでいる。昔なら、品数は少なくても、店員からアドバイスがあったものだが、いまは、マーケットに事が流れてしまっているようで、例えば、トレッキングポールはいつの間にか、主力がT型のステッキ風になってしまった。欧米ではありえないことだ。海外の有名アウトドアサイトを見ればすぐに分かる。

 このあたりに、日本のアウトドアズの限界が見えるように思う。専門店を少しのぞいてみれば、トレンドがよく分かる。素材の発達でアウトドア用品の機能と性能は、画期的に向上していることが見てとれる。しかし、残念ながらその機能と性能を享受する人口は減少しているのだ。夏休みを直前に、ホームセンターなどでは、アウトドアコーナーと称する売り場が設けられ、相変わらず、バーベキューセットがうず高く積まれている。なかなかアウトドアアクティビティは見えてこない。そして、なぜか、飯盒も定番のようだ。このあたりだけは、進化はしていないようだ。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアコンセプター・ジャーナリスト。
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際アウトドア専門学校顧問、NPO法人比良比叡自然学校常務理事、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。