- 第181回 -  筆者 中村 達


『自転車とヘルメット』

 最近また自転車に乗り出した。もともと運動不足を補うためにはじめたのだが、冬に一旦中断したあと、すっかりご無沙汰だった。
 東京などに出張していると、実によく歩く。地下鉄の階段はやたら多いし、歩く移動距離はかなりのものになる。私の住んでいる滋賀県の田舎だと、完全な車社会だから、ドアからドアまでは基本的に車である。だからへたをすると歩数は、1日にせいぜい1,000歩未満ではないかと思う。きっとそんな人も多いはずだ。都会ほど運動量は多く、地方ほど運動量は少ない。一見逆のように思うが、現実のお話である。

 いま、自転車が静かなブームなのだそうだ。スポーツやレクレーションではなく、健康づくりが目的だ。もちろん、ガソリンが高騰しているので節約という意味もあるし、省エネもそのあとに遅まきながらついてくる。
 ちなみに国内の自転車人口は、およそ1,600万人と、かなりの人口だ。それに対してアメリカは8,600万人で、これまたすごい数字だ。その上、日本の自転車の大半がママチャリなのに対して、アメリカのそれはカテゴリーがはっきりしたスポーツ系の自転車というところが根本的に異なる。

 さて、私の家から仕事場までは、およそ12km。坂道も結構あるので30分はかかる。だから運動量は多く、体にはいいのだろうし、トレーニングにもなる。しかし、走るたびに感じるのは、この国の自転車に対する道路行政のお粗末さだ。まず、自動車がメインで、ついで歩行者。自転車道は、部分的には整備はされつつあるものの、連続はしていないし、行政区が変れば突如消滅してしまうことが多い。また、道交法では自転車は歩道を走ってはいけないことになっている。車の横を走るのは危険だが、現実は仕方がないのだ。高齢社会で医療費を削減しなければならないし、環境問題も考えれば、自転車道のインフラ整備は急務だと思うのだがいかがだろう。

 一方、最近ヘルメットをかぶって、自転車に乗っている人をよく見かけるようになった。欧米では義務化しているところも多いが、国内では中学生がかぶっていて、高校生になればかぶらずに、大人はまったくかぶらない。そんな中でわずかではあるが、増えてきているのはいい傾向だと思う。もっとも、ロードレーサーやMTBに乗っている人ばかりだが・・・。
 私もヘルメットをかぶっているのだが、不思議なことにヘルメットをかぶっている人たちは、すれ違いざまに、なぜか会釈をしてくれる人が多いことに最近気がついた。同じ趣味であることの連帯感なのかよく分からないが、何かしら少しうれしい気分になるヘルメット通勤である。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアコンセプター・ジャーナリスト。
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際アウトドア専門学校顧問、NPO法人比良比叡自然学校常務理事、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。