![]() ![]() ![]() - 第176回 - 著者 中村 達
『アウトドアズの入口を考える』 今年もGWが始まる。一年で最長の連続休暇だ。うまく調整すれば正月やお盆休みより長い。温泉は各地にあり、歴史遺産や社寺仏閣も多く、いたるところが観光地となっているこの国では、観光旅行が最も人気のある余暇活動だ。国内観光旅行者は、およそ6,000万人と推計されている。 そんな中でアウトドアレジャー、正確に言うとアウトドアアクティビティは、総じて元気がない。あらゆるアクティビティが低迷している。スキー、スノボーは低迷の一途だし、パドルスポーツも、ごく一部の愛好者が楽しんでいるに過ぎない。一時、MTBがもてはやされたが、あまりにも競技指向のイメージが強すぎたのか、すっかり影を潜めている。 自転車といえばあくまでママチャリである。 パラグライダーの参加人口も統計に表れないほど微細である。ハングライダーもお目にかかることは、ほとんどなくなってしまった。 ![]() オートキャンプもブームはとうの昔に過ぎ去り、残ったのはバーベキューパーティだけとなった。 また、この国の地勢は70%が山岳丘陵地帯なので、アウトドアズの中で最も参加人口が多いと思われる登山、山歩きは、例の日本百名山登山で、中高年の間で爆発的な人気となったが、いまは下だり坂と言っていいだろう。中高年登山は、それでも愛好人口はいまなお多いが、それが若者たちに伝播していかないのが問題だ。「危険、きつい、格好が悪い」の3Kが若者たちに見放されているとすれば、私なども大いに反省しなければならないのかもしれない。GW中、各地の有名山岳は、多くの中高年登山者が山歩きを楽しむことだろうが、一時の勢いはないだろうと推測する。それは、例年に比べて、この時期の登山用品の売れ行き不振からも容易にわかる。 アウトドアズが低迷の一途をたどっているのは、先進国ではおそらく日本ぐらいのものだろう。たとえば、スキー人口のピークは40歳代で、10歳代に向けて急降下している。 他のアクティビティでも似たようなものか、きわめて低いラインで一直線だ。 それに対し、米国では17歳(統計があるのは)から50歳代まで、多くのアクティビティが一定の参加人口があり、グラフはフラットだ。ちなみにアウトドア人口は1億6千万人にも達している。余談だが米国のアウトドアズは、「ヒューマン パワード アクティビティ」と定義されているので、ゲレンデスキーやオートキャンプのようなものは、カテゴリーには含まれていない。 ![]() この国でアウトドアズを盛んにするには、アウトドアズの「入口」となる子どもたち、若者たちを、いかにしてアウトドアズに参加させるかに尽きるのではないか。それには、家庭で、学校で、あるいは地域社会での自然体験活動を活発に行うしかない。これまでアウトドアズの「入口」の重要さが、こと私も含めたアウトドアズの関係者に、希薄だったような気がする。課題も多いが、いましかチャンスがないように思う。 理科離れや学力不足、体力不足が指摘されているが、どんな方向からも、あらゆる角度から考えてみても、自然体験活動が問題解決の有力な処方箋であると、はっきり分かるのだが・・・。 (次回へつづく)
■バックナンバー ■著者紹介 中村 達(なかむら とおる) 1949年京都生まれ。アウトドアコンセプター・ジャーナリスト。 NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際アウトドア専門学校顧問、NPO法人比良比叡自然学校常務理事、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。 生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。 |