- 第165回 -  著者 中村 達


『スノーシュー』

 スノーシューが静かなブームである。スノーシューとは、分かりやすくいえば西洋カンジキのことだ。日本で古くから使われていたカンジキは「くろもじ」や「とねりこ」などの枝を湾曲させて作られていた。私たちが冬山で使っていた頃は、ワカンと言っていた。
 スノーシューももともとは、アッシュ材などで作られていたそうだが、現在のものはアルミやプラスチック、チタンなどが多用され、滑り止めのアイゼン機能などもついている。スノーシューはカンジキに比べて、初心者でもすぐに慣れ、大変歩きやすい。特に浮力に優れているので、深雪にはかなり有効だ。

 数年前のことだが、米国のソルトレイクシティで毎年開催されている世界最大のアウトドア用品の展示商談会で、スノーシューが売れに売れまくっていると、どのメーカーもホクホク顔だった。次シーズンは、すでに予定より受注がオーバーしたと、うれしい悲鳴をあげているメーカーもあった。

 なぜ、米国で大ブームとなったかだが、これはスノーボードの影響だと、ショーの主催者が教えてくれた。米国ではスノーボードといえば、バックカントリーが人気だ。バックカントリースノーボードをするためには、雪山をボードを担いで登らなければならない。そのための道具として、スノーシューが一躍脚光を浴びたのだという。日本とはこのあたりの事情が違う。
 国内では、もっぱら中高年登山者が雪山歩きに使用しているというのが主流だろう。
 最近では若い人たちでも、スノーシューを楽しんでいる姿を見かけるが、まだまだ少ない。考えてみれば、若者たちの登山人口が激減している中で、雪山歩きのスノーシューだけが増えるはずはない。
 米国のアウトドアショップでは、子ども用のスノーシューや雪山での遊び道具が数多く売られている。歩けば、熊やヘラジカの足跡がつく楽しいスノーシューもあった。

 とはいえ、最近ではスキー場やその周辺ではスノーシューのコースが出来たり、レンタルもかなり増えてきた。雪で覆われた森や山麓を歩いてみると、思いがけない発見があったり、すばらしい景色に出会う。この年末年始は雪不足が少し心配だが、一度試してみてはいかがだろう。

(次回へつづく)


■バックナンバー

■著者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際アウトドア専門学校顧問などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。