- 第157回 -  著者 中村 達


『信越トレイル』

 長野県の北部、飯山市にある関田山脈に信越トレイル(http://www.s-trail.net/)がある。昨年、その一部約50kmが開通した。全てが開通すればおよそ80kmとなる。欧米に数多くあるロングトレイルに比べれば距離は短いが、ともかくわが国でははじめてのロングトレイルだ。
 標高1000m級の関田山脈の稜線に沿ってつくられたトレイルは、その多くがブナの原生林で覆われている。稜線の北に向かって右が信州、左が上越だ。かつて上杉謙信が越えたであろう多くの峠が、この山脈を横切っている。上越からは海産物に米、それに塩が信州側に運ばれた。信州側からは木工品や農産物などが送られていたようだ。トレイルのビューポイントからは、日本海や佐渡島も見える。

 この信越トレイルは、飯山市の自然体験活動の拠点となっている「森の家」(http://www.iiyama-catv.ne.jp/~morinoie/)を母体として、NPO法人信越トレイルクラブが中心となって整備をおこなっている。
 そんなトレイルをネイチャーライターの加藤則芳さん達と歩いてきた。加藤さんは昨年アメリカの東海岸沿いに南北に走るアパラチアントレイル(約3500km)のスルーハイクを成し遂げた数少ない日本人の一人だ。
http://www.j-trek.jp/kato/archives/category/01_appalachian.html
 この信越トレイルは、加藤さんの想いもこめられて作られている。ローインパクト、自然にやさしく、がそのコンセプトである。道標も少なくし、できる限り古道を利用するなど、自然へのダメージが極力抑えられたうえで、トレッカーが楽しめるように工夫されている。

 これからは「歩く旅の時代」だと私は考えている。長い距離を、自然を楽しみながら、土地の歴史風俗に触れながら、誰でも歩けるようなロングトレイルが必要だ。この国には、これまでロングトレイルという概念は、非常に希薄だったような気がする。信越トレイルが端緒となって、全国各地にロングトレイルができればと願う。

 さわやかな秋の一日だった。中高年者に混じって唯一参加した地元の小学生が、ブナの森で歓声をあげた。「すごーい!」。そんな感性をもつ子ども達が、もっともっと増えてくれればすばらしいと思う。

(次回へつづく)


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■著者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。