  
- 第148回 - 著者 中村 達
『梅雨の合間の山歩き』
長野県の高峰高原で会議があった。この日の朝は昨日までの梅雨空とは打って変わって、雲ひとつない快晴だった。こんなチャンスはないと会議の前に、水の塔山(2,202m)に登ってきた。車坂峠からせいぜい1時間も歩けば、山頂に立つことができる手頃な山だ。
平日の朝だけあってさすがに、登山者もいなかった。ルートの途中にはレンゲツツジが咲き、振り返ると黒斑山の上に浅間山が顔を出していた。山頂からは八ヶ岳や志賀高原の山々も見えた。誰にも出会うことのない静かな山歩きは久しぶりだと思っていたら、下山途中で、やはり中高年登山者のグループとすれ違った。
いつもながら、なぜか息を切らせて足早に登っていた。もっとゆっくり歩けばと思うのだが・・・。
登山口に降り立つと、女子中学生の団体が貸し切りバスから下車するところだった。聞いてみると、東京から来た女子中学校1年生約200名の団体だった。これから、水の塔山、篭の登山を縦走し、池の平湿原から三方が峰を経由して、湯の丸までのトレッキングだそうだ。結構な距離だ。子ども達も、引率の先生も、表情が生き生きして楽しそうに見えた。黄色い話し声が飛び交い騒然としていたが、子ども達のにぎやかなのは、こちらもなぜか楽しくなってくるのが不思議だ。都会の中学生が集団登山。まだまだ捨てたものじゃないこの国の野外教育も・・・そう思った。
(次回へつづく)
■バックナンバー
■著者紹介
中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。
|