− 第140回 −  著者 中村 達


『キャンプネームの不思議』

 子ども達のキャンプなどに同行すると、指導者やリーダー達がキャンプネームをつけるように指導することがある。キャンプで、お互いを認識するためのいわばニックネームである。「ジョン」とか「ピッキー」とか、なぜか横文字が多い。どうみても日本人の顔と、キャンプネームは一致しないように思うのだが、ともかくそんな名前が、カードになって子ども達や指導者の胸にぶら下がっている。
 ある、野外活動に同行したとき、バスの中でリーダーが、キャンプネームの紹介をはじめた。不思議なことに子ども達やリーダーは、自分のキャンプネームを披露しはじめた。なぜか私もキャンプネームを言わなければならない羽目になり、あわてて自分の名前を音読みで言って、なんとかその場を切り抜けた。冷や汗ものだった。

 そんな話を、筑波大学の名誉教授で野外教育の草分けでもある、長谷川純三先生に話すと、「困ったものですね」と、キャンプネームのいわれを教えていただいた。
 そもそもキャンプネームは、米国の野外教育の現場で考え出されたのだそうだ。人種が多様な米国では、日本では想像も出来ないほど、名前によって出身地や人種が分かることが多く、それが差別に繋がることがある。そこで、野外活動の場で子ども達に人種差別が起こらないようにと、キャンプネームがつけられたのだとうかがった。キャンプネームだけだと、出身地や人種はわからないという配慮なのだ。
 この米国がかかえる社会的な背景を抜きに、米国の野外教育をそのまま日本に持ち込んだ、いわばコピーした結果のひとつが、キャンプネームなのだそうだ。この話をお聞きして、摩訶不思議なキャンプネームが、なぜ野外教育や自然体験の現場に広がっているのか、理解できたように思った。なぜキャンプネームが必要なのか。果たして日本で必要か?こんな素朴な疑問を指導者たちはもたないのだろうか?このあたりに、この国の野外活動の課題や限界が見えてくるような気がするのだが、いかがだろう?

(次回へつづく)


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■著者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。