![]() ![]() ![]() - 第135回 - 著者 中村 達
『管理責任』 春休みも近づいて、自然体験活動団体や青少年育成団体、それに各地の自然学校では子どもたち向けの事業の準備に忙しい。自然体験活動が必要だと、誰もが異口同音に言うのだが、現実には子どもたちを集めるのが大変困難だという問題に直面している。 ある自然学校の責任者が、1000円のプログラムにも親はお金を出してくれないと言っていた。子どもの居場所づくり事業でも、子どもたちを集めるに苦労の跡が見える。トム・ソーヤースクール企画コンテストの支援団体の報告書にも、予定どおりに参加者が集められないというところが目に付く。 子どもが被害に遭う凶悪な事件があとをたたないし、外遊びはいまや危険な行為に思えるほどだ。私の自宅の近くにある公園でも、子どもたちの声を聞かなくなって久しい。外は危険だというだけでなく、塾や稽古ごとに忙しく、それに子ども部屋にはTVゲームがあるので、外で遊ぶ必然性が生まれなくなってしまったのだろうか? 地方、なかでも中山間地域など交通の便が悪いところでは、とりわけ子どもたちの姿を見なくなった。もちろん過疎で少子化ということもあるのだろうが、学校が終わったあとや、休日は子どもたち同士が携帯で連絡を取り合って、親に車で代わる代わる子どもたちの家に、直接送ってもらうそうだ。だから、外で遊ぶ姿が大変少ないのだと、聞いた。 これから高齢化がいっそう進む。'07年からは団塊の世代が大量に放出される時代がはじまる。団塊の世代が経験とスキルを生かして、子どもたちに自然体験させるという事業が各地で計画されている。面白いスキームだと思う。私もそんな計画をいくつか抱えている。しかし、ここで問題となってくるのが、安全管理だ。指導者責任はきわめて重要だし、リスクは極力回避しなければならない。だが、面白い自然体験ほど、危険がともなう。面白さと危険度は正比例する、と私は思っている。そのあたりを、どのように線を引き、指導者がリスクをどこまで被るかというのは、国の支援や社会の理解が必要だと考える。 先日、脚本家・倉本 聰さんの講演を聞く機会があった。氏は管理責任をもう少しアバウトにしなければ、トム・ソーヤーはいなくなる、という趣旨のお話をされていた。同感である。 (次回へつづく)
■バックナンバー ■著者紹介 中村 達(なかむら とおる) 1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。 通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。 生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。 |