- 第134回 -  著者 中村 達


『女子大生はスノーボードが好き』

 女子大のスキー研修に合流した。なんて言うと、いいなーなどと羨ましがられるが、なんのことはない自分の娘と同じ年頃なので、まるで子どものように思えてしまう。
 およそ30名の女子大生は、スノーボードかスキーの選択で、スキーを希望したのは、わずか3名だけだった。参加者の1割だけがスキーだった。結局、引率の先生たちと3名の生徒だけがスキーで滑った。スキーは、すっかり若者たちに見放されてしまったようだ。

 スノーボード希望者のほとんどが初心者なので、スクールのレッスンを受けた。見ていると、かつてのスキー講習とは随分と様子が違う。まず、堅苦しさはないし、緊張した雰囲気もない。常に生徒たちに笑顔がある。インストラクターも教えていて、楽しそうに見える。この自由さ、明るさにスノボー人気の一端をみたように思う。
 一方、他団体のスキーヤーたちの講習風景を見ていると、昔のままだ。ちっとも変っていないように感じた。立ったままで技術を語っている時間が長すぎる。一般的に、滑る距離に比例してスキーは上達するものだし、時間を惜しんで滑ったほうがいいと思うのだが・・・。少なくとも、講習風景にはスキーとスノボーとは、格段の差があるようだ。

 ただ、スノーボードを選択した多くの女子大生は、だからといってこれからもスノーボードを続け、うまくなりたいということではないらしい。これはこれで、楽しかったし、これで終わりということなのだそうだ。私がスキーに熱狂していた頃のように、技術談義をするわけでもないし、道具、用具にこだわっている風はない。
 何しろ、遊びの選択肢が溢れているので、スノボーに熱中という域に達する若者たちは、ごく少数なのだ。トリノオリンピックでは、日本の選手たちの不振が伝えられているが、欧米諸国とはウィンタースポーツ人口の層の厚さが、格段に違うのが背景にあるように思える。

 この日の夕刻、スノボーフリークの助手のBさんと、新雪をすべりに出かけた。膝までもぐる新雪だったが、彼女のボードのほうが速かった。新雪をコチョコチョまわるスキーよりも、豪快なターンで大きな弧を描くボードのほうが、はるかに面白そうに思えた。

(次回へつづく)


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■著者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。