- 第130回 -  著者 中村 達


『厳寒の冬は好景気』

 豪雪である。いま、私の仕事場の窓の外も吹雪いている。
 昨日、京都のアウトドアショップに顔を出した。年末から正月にかけて絶好調だという。
 特に「綿モノ」といわれる、ダウンジャケットやキルティングのアウターが大変よく売れたそうだ。なかには、昨シーズンの倍売れたブランドもあったとかで、すでに品薄状態だそうだ。防寒服がよく売れている理由は、戦後で一番の寒さだろうが、ともかくアウトドア業界には神風が吹いている。

 かつてダウンジャケットは、数万円はする高値の花だった。大卒の初任給が2万円台だった時代のお話ではあるが・・・。大学2年生の時、必死の思いでアルバイトをして、手に入れたフランス製のダウンジャケットは3万円もした。大事に、大事にして、火のそばでは脱いでいた。それが、いまでは、わずか数千円で手に入る。
 フリースももともとはアウトドアユースで、輸入され始めた当時は1万円以上した。しかし、いまでは千円で買えるし機能もまったく問題ない。発熱素材が使われたアンダーウェアは登山用で始まったが、いまやスーパーなどでも売られているし、種類も増え価格も下がった。

 一方、子ども用のアウトドアウェア、正確には普段着だが、機能素材が使われたものも多く、しかも安価に手に入るようになった。欧米のアウトドアショップには、必ずといっていいほど、子ども用のアウトドアコーナーがある。日本では子ども用に関しては、ほとんど無視されていたようだが、最近ではラインナップする専門店も増えてきた。また、○○クロなどでは、アウトドアでも十分使用できるものが並んであり、高価なものを買う必要はなくなったようだ。ともかく、子どもたちをアウトドアに連れ出す、ハードウェアだけは、環境がリーズナブルに整いつつある。あとは、私たち大人の責任である。

 また、スキーもよく売れている。もちろん、一般的に売れているというのではなく、尖がった層の買い替え需要が中心ではあるが、少しは息を吹き返した。
 今朝、びわこバレイスキー場から、なぜか理由は分からないが、スキー客がどーっと増え、ここ何年か見られない活況だと、うれしい連絡があった。

 正月早々、私の友人である南禅寺の和尚から、山スキーに誘われた。物置から山スキー用の兼用ブーツを出してみると、薄っすらと白い粉が噴出していた。加水分解の始まりである。これでは危なっかしくて、とてもツアーには行けない。いてもたってもいられなくなった。高い出費になるが、今日にでもショップに出かけることにした。神風の一片になるのかも。

(次回へつづく)


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■著者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。