- 第129回 -  著者 中村 達


『今年から来年へ』

 今年も残すところあとわずかである。あっという間の1年だった。と、毎年誰もがそう思っていることだろう。
 今年を振り返って、こと子どもたちの自然体験活動の状態を見ると、さほどいいようには感じなかった。子どもの自然学校でも、参加者を集めるのが大変難しい状況である。トム・ソーヤースクール企画コンテストの報告書でも、子どもたちを集めるのに苦労が窺える。
 山の中でも子どもたちや、若者たちの姿を見る機会は、総じて少ない。しかし、アウトドアで出会う子どもたちの目は、生き生きと輝いていたのは確かだ。近郊のハイキングルートでも、夏のキャンプ場でも、山小屋でもそうだった。引率の大人たちも明るかった。

 少子化といわれているが、それでも1000万人近くの子どもたちがいる。その子どもたちを公園や路地で見ることが少なくなった。いったいどこに消えてしまったのかと、不思議に思う。子どもたちが凶悪な犯罪にあうことが多くなって、外で遊ぶのをとめられているのか。家の中でTVゲームに熱中しているのか。塾や稽古事に忙しいのか・・・。

 学校週5日制になって、休日は何もすることがないという子どもたちが、400万人もいるらしい。一方で、雪が沢山降っても、多くの若者たちはスキーやスノボーにも行かず、山に登るのも希少種になっている。山は中高年のオジサン、オバサンたち占拠されたままだ。
 時代はロハスだとかで、気分は自然志向だが、その波は子どもたちには届いていない。

              だが、07年から始まる団塊の世代の定年は、何もすることのない大人たちの大量出現である。この世代の熟成したスキルや豊富な経験を、子どもたちの自然体験やアウトドアズにどう生かすか、そんな時代への助走がいよいよ始まるように思う。日本のアウトドアズに新しい波が来ると期待したい。

(次回へつづく)


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■著者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。