- 第115回 -  著者 中村 達


『夏休みの指導者不足』

 夏休み真っ盛りで、各地の自然学校も忙しい。忙しいのは結構だが、いま、夏の繁忙期に自然学校は、ちょっとした問題を抱えている。それは指導者不足である。
 自然学校の規模や目的にもよるのだが、子どもたちの自然体験活動を事業の柱にしているところは、夏休みの繁忙期に良質な指導者をいかに確保するかが、事業の成否を左右する。特に大学生の労働力は、自然学校には欠くことが出来ない人的資源である。

 ところが、多くの大学で前期試験を7月末にして、8月から9月いっぱいまで夏休みというところが増えてきた。一昔前までは、大学生は夏休みが終わるや否や前期試験で、ダラケタ身体と頭を試験モードにするのが大変だった。
 この前期試験の前倒しと、夏休み期間の後ろシフトによって、自然学校は7月末の繁忙期のピークに、大学生のアルバイト指導者を確保することが、非常に困難になってきている。小学校や中学校は、7月20日前後から夏休みになるので、自然学校には夏休み直後のプログラムに申し込みやニーズが多い。つまり、かきいれどきに指導者不足という事態が発生しているのだ。
 かといって、この人材不足を一般の社会人やプロのインストラクターに依頼すれば、コストパフォーマンスが低下するし、高くなった事業経費はそのまま参加費の値上げに直結し、市場性をなくしてしまうことになる。
 また、子どもたち相手の自然体験活動の指導には、体力がもっとも重要だし、細々とした雑用にも翻弄されがちで、大学生だから、若いからこそ苦もなく出来る作業が非常に多い。

 もちろん、大学生頼みの自然学校では心もとない限りではあるが、制度として指導者の育成や資格などが整備されていないという問題もある。子どもたちの自然体験活動の普及や、中高齢者のアウトドアニーズに対応するには、指導者育成と資格制度の構築が急務である。

(次回へつづく)


■バックナンバー

■著者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。