- 第114回 -  著者 中村 達


『軽井沢のアウトレットと高峰高原』

 軽井沢駅のすぐ近くに、アウトレットモールがある。年間800万人もの観光客が軽井沢に訪れるといわれているが、その多くの人たちがこのモールに来るらしい。
 軽井沢は名だたる避暑地だけあって、さすがに吹く風は涼しかった。
 初めてこのモールを訪ねた。巨大な駐車場はほぼ満員で、たくさんの買い物客で溢れていた。

 軽井沢に住むあるインタープリターに、軽井沢の様子を聞いてみると、観光客の多くはすることがないので、このモールに来るのだそうだ。正確なデータがあるわけではないし、真偽のほどはわからないが、大勢の買い物客を見ている限り、少なくとも軽井沢での過ごし方のひとつの方法なのかもしれない。

 軽井沢のアウトレットモールを早々に退散して、高峰高原に出かけてきた。標高が2,000mもあるので、吹く風は涼しいというより、肌寒いくらいだった。高峰高原は、いまは噴火で登山が禁止となっている浅間山の登山口であり、高山植物で有名な水の塔、篭の登などの山々と、池の平湿原などの入り口でもある。
 この高原にも沢山の登山客やハイキング客が訪れていたが、驚いたのは彼らの多くが高山植物などの野草に大変関心が高く、持参したポケット図鑑で花の名前を調べたり、教えあったりしていることだった。コマクサの群生を見にきた、大勢のお年よりにも出会った。 
 これまで、多くの山岳観光地を訪れているが、これほど多くの高山植物ファンに出会ったことはなかったように思う。
 この日、ニッコウキスゲが満開だった。このあとヤナギランがいっせいに咲き始める。

 池の平湿原では、林間学校にきた小学生に出会った。すれ違う子どもたちの口から次々と『こんにちは!』という挨拶が出てくるのは、自然の力なのだろう。

 軽井沢から車でわずか1時間の距離に、こんな別天地、天空の遊歩場があった。

(次回へつづく)


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■著者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。