  
- 第105回 - 著者 中村 達
『釣れないのはカワウ?放流後追いオジサン?のせい』
シーズンが始まった。渓流釣りのことだ。早速、近くの漁協で年券を買った。8,000円が高いのか、安く感じるのかは人それぞれだが、日券なら2,000円だから、4回も通えば元はとれる勘定ではある。
この遊漁券は、たいていは当該地区の漁協が発行している。アマゴや岩魚を放流して釣り人たちが楽しめるようにしている。だから原則として、国内の主な渓流は、遊漁券を購入しないと釣りは出来ない。これはルールなので、守らなければならない。釣れようが釣れまいが、遊漁券は買わなければならない。
ところで、私が通っているその渓流では、アマゴなどの放流日がホームページなどに掲載されているため、放流の直後には大勢の釣り人がやってくる。中には、放流する車の後について行き、放流されるや否や釣りはじめる人も結構多いらしい。放流された直後、魚たちは自然の渓流に慣れていないので、餌に飛びついて入れ食い状態で釣れる。まるで釣堀なのだ。だったら釣堀に行けばいいのにと思うのだが・・・。ともかく、ごっそり釣上げて行くらしい。いいといえばそれでもOKなのだが、キャッチアンドリリースが基本の私としては、理不尽なお話である。
漁協で遊漁券を買った後、ポイントを探して歩いていると、木陰で休んでいる初老の釣り人に出会った。午後に放流されるとかで、それをのを待っているということだった。
その日から数日後、京都北山の渓谷沿いで山菜パーティがあり出かけてきた。場所は鞍馬からさらに北へ車で1時間ほどのところだった。事前に地図でその場所を確認すると、どうやらいいポイントがありそうなので、釣り道具もひととおり持って出かけた。
出かけてみると、大勢の人たちが集まっていて、その中に旧知のベテランの釣り師がいた。聞いてみるとこのあたりの沢は、今年は全く釣れないのだそうだ。理由はびわ湖に異常発生したカワウが、滋賀県から数十キロも飛来して、京都北山の最深部にまでアマゴや岩魚などの渓流魚を食べつくしたからだという。今年は冬が長く水温が低いため出ないのかと思っていたが、びわ湖のカワウが原因だとは想像だにしなかった。自然環境の変化がこんなところにも現れていた。
カワウの話を聞いて、放流車の後についていくオジサン達の姿を思い浮かべた。
数日前にもフライに出かけた。丸1日かけてカワムツが2匹だけという燦燦たるありさまだった。腕が悪いのを、カワウと放流後追いオジサンにすり替えたりして・・・。
(次回へつづく)
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■著者紹介
中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。
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