- 第101回 -  著者 中村 達


『学力低下より、体力の低下が心配』

 この1週間で3つものシンポジウムにかかわった。さすがに連続すると疲れるのだが3つともいつになく熱心な参加者が多く、ついついこちらも力が入ってしまった。
 作家のCWニコルさんや、登山家で医師の今井通子さんらがパネリストとして参加した自然体験活動指導者のためのシンポジウムは、企画構成した私にとっても大変興味深かった。

 自然体験の必要性や有用性はいまさら指摘するまでもないが、なぜ必要なのか、どのような効果があるのかなどの医学的な研究データはまだまだ少ない。なんとなくいいのではないか、と思われているだけといえばその通りなのだ。
 このシンポジウムでは今井さんが医師の立場から、例えば森の中に入ると血圧が下がったり、ストレスが減少したりするといった効用を、データを示しながら解説したので、大変興味深く聞くことができた。しかし、よくよく考えてみと、自然体験活動がなぜいいのかについて、これまではデータで示されることが少なく、これからは説得力をもつためにもこの分野の研究が必要だとあらためて感じた。

 ニコル氏は、子どもたちをだめにしたのはコンピュータゲームだ。勉強なんて森の中で出来ることも多いし、数学も木の数を数えたり、森の面積を計算したり、川にボールを流して、流れの速さを算出するなんてことも実践的に出来るなどという趣旨のお話だった。そして、みんなでもっと子どもたちを森に連れ出そうと熱弁をふるっていた。

 パネリストの論議の中で特に印象に残ったのは、確かに学力は低下しているが、これはトップレベルでの話し。目を転じてみると子どもたちの意欲の低下、そして体力の低下が実は大変深刻なのだ。これらは上位レベルで低下しているのではなく、一番低いレベルでさらに低下しているのだそうだ。意欲がなく、体力もない子どもたちの将来は決して明るくはない。この国の未来も暗澹たるものになる。だから自然体験活動が必要なのだ、と説く文部科学省の専門官の話は、世の教育ママたちにぜひ聞かせたいと思った。

(次回へつづく)


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■著者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。