- 第94回 -  著者 中村 達


『白川郷に誕生するトヨタの自然学校』

 来春、岐阜県の白川郷にトヨタ白川郷自然学校 http://www.toyota.eco-inst.jp/ が開校する。建物はほぼ完成し、内装工事中の自然学校を見学させていただいた。さすがにトヨタ自動車がつくる自然学校だけに規模も大きいし、立派な建物だった。この自然学校によって、世界文化遺産に指定された白川郷に訪れる観光客や子どもたちに、環境教育や自然体験の機会が提供されれば、すばらしいことだと思う。トヨタ自動車のような巨大企業が自然学校を開設する意味は大きいし、社会に訴えるインパクトは絶大である。

 事務局スタッフに採用された、旧知のH氏に案内してもらった。彼は東京で大手広告代理店の営業マンとして、第一線で活躍していたのだが、自然体験活動にこれからの人生をかけようと、この学校にトラバーユした。岐阜県最北端の山深い白川郷の里で、これまでとは180度違う、全く異なるライフスタイルで過ごすことになる。すごいと見るか、大変だと考えるか、うらやましく思うか・・・、しかし、これからの世の中は、そんなライフスタイルを求める人たちが、相当増えてくるのではないか。
 半年ぶりにあった彼は、ひげをはやして、すでに仙人のような風貌に変わっていた。雪深いこの地では、雪かきも大切な仕事だそうで、二種免許も取得したそうだ。

 トヨタの自然学校は、規模からいって別格だが、今年も各地で自然学校が数多く誕生した。まだまだ小規模なところが多いが、着実にこの動きは加速しそうだ。それに伴って、指導者の絶対数が不足するという問題も発生してくるだろう。このあたりが、自然体験業界全体に課せられた、課題だと思う。

 例年、年末のこの時期なら、白川郷も雪で埋まっているはずなのに、雪はまったくなく、セーター姿の観光客が、合掌造りの家々を訪ね歩いていた。晴れ上がった空に、雪囲いが目立ってなんとも奇妙な風景だった。南国育ちのH氏に、暖冬はいいのか悪いのか・・・、次回は、仙人面を拝みがてら雪見酒と洒落てみたい。

(次回へつづく)


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■著者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。