- 第80回 -  著者 中村 達


『河原のバーベキューもいいけれど・・・』

 いよいよ夏休み。連日の猛暑である。休みの日には、ともかく人々はドーッと、涼を求めてアウトドアに出かける。私がよく通う鯖街道沿いの渓谷、葛川下流の河川敷には、キャンプサイトや広場がたくさんある。テントやタープが軒を重ねるように並び、その屋根の下では、家族連れがバーベキューを楽しみ、子どもたちは川遊びをする。そんな図式が、この渓谷の夏の風物詩になっている。普段ならアマゴや岩魚の絶好なポイントで、子どもたちが水しぶきをあげて遊びまわっている。魚たちは恐れをなして、深く身を隠し、しばらくは出てこない。夏のこんな休日は、全く釣りにならない。翌日もだめだろう。

 街道からそれて、支流の林道に入ってみると、そこには想像もしなかった光景が広がっていた。なんと、広場はもちろん、路肩にも多数の車が停まっていて、落ち込みの続く渓谷では、子どもたちが水遊びに興じていた。大人たちは木陰でビールを飲むか、昼寝の図であった。
 ここはつい先日、蜘蛛の巣を掻き分けて、天然岩魚を釣上げたところだった。仲間と「さすがに、ここまでは入ってこないなあ」などと、能天気に話していた場所だった。ここもしばらくは釣れない。

 確かに、ここは京都市内から車で、1時間ほどで来ることができる、良質なアウトドアスポットである。河原でベーベキューをしたり、川遊びをするにもお金はかからない。人家も少ないし、水も冷たくきれいだ。子どもたちが親たちに連れられて、自然のなかで遊ぶのは、大変結構なことだ。ゲームセンターやファミコンで遊ぶのとは、雲泥の差、月とスッポンである。しかし、幾分ましになったとはいえ、散乱しているゴミや、捨てられたペットボトルを見ると、環境教育はマナーから、などという標語が頭に浮かんできた。
 そして、8000円の年間遊魚券を買っている、私たちフライフィッシャーのことも、少しは考えて・・・。これは無理な相談か・・・。

(次回へつづく)


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■著者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。