![]() ![]() ![]() - 第65回 - 著者 中村 達
『関学WV部遭難騒ぎ』 案の定というか、関西学院大学ワンダーフォーゲル部の雪山遭難騒ぎで、いろいろと批判めいた報道が多かった。経験不足、雪山を甘く見た、準備不足、天候の予測ができなかった・・・などなど、確かにそのどれも当たっているといえば、あたっている。正論である。 しかし、よくよく考えてみれば、山登りに100%安全なものはないし、最強とか、優秀なとか言われた登山家や冒険家で、遭難して帰らぬ人となった例は枚挙にいとまがない。 あの植村直己さんもそうだったし、数多く世界のトップレベルの登山家も遭難している。 わたしがかつてカラコルムに同行させていただいた、国内最強のひとりといわれた登山家も、中国の山でいまだ行方不明である。 だからと言って、遭難は仕方がないといっているわけではないし、今回の遭難騒ぎを擁護しているものでもない。ただ、報道をみて、その批判を正面から捉えれば、山などは危険すぎて登っていられないと思うし、若者達に自然体験などは、勧められなくなってしまう。 いつになれば、この国は冒険や探検といった、自然の中でチャレンジする行為に、寛容になるのだろうか。理解できるのだろうか。口ではチャレンジや、パイオニアワークあるいは、ベンチャー精神が必要だといいつつも、今回のような遭難騒ぎがあると、まるで魔女狩りのようになってしまうのは、なんとも困ったことだ。 山で遭難してもらっては困るが、携帯電話やゲームにのめりこむより、山で汗を流している若者達が増えるほうが、この国の未来は明るい。 そんな中で、京都のFM局のDJが、この遭難騒ぎで若者達のチャレンジ精神がそがれることがないように、という趣旨のコメントしていた。同感である。 確か数年前のことだが、この大学の学長が、新聞の記事広告の中で、『若者よ、山に登れ!』と語っていたのを思いだした。 (次回へつづく)
■バックナンバー ■著者紹介 中村 達(なかむら とおる) 1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。 通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。 生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。 |