  
- 第55回 - 著者 中村 達
『中高年登山者の単独行』
少し早かった雨乞岳の紅葉
紅葉がはじまった鈴鹿山系の雨乞岳(1,238m)に登ってきた。まえまえから一度は登ってみたいと思っていたが、なかなか機会がなかった。渓流釣で周辺の沢を歩いてはいるが、山頂まで登るのは初めてだった。初夏から初秋までの時期は、雨乞岳周辺ではヤマヒルがでる。私も一度、靴の中に入り込んだヤマヒルにやられた。だから、登山時期は春や秋が安全だ。
1,000mラインの紅葉は、まだ少し早かった。11月には入ればもっと鮮やかに色づくのだろう。しかし、クラ谷のブナの森は、すばらしくきれいだった。
中高年単独登山者の遭難
鈴鹿山系は、三重県や名古屋から近く、人気のある山岳だ。観光地と化している御在所岳は別格としても、鎌が岳や藤原岳などは登山者が多い。その点、雨乞岳は比較的登山者も少ないようだ。登山道は歩きやすく、道標もしっかりしているので、まず迷うことはない。しかし、稜線などでは、背丈以上の熊笹に覆われているところもあるし、沢ではルートをしっかり見ていないと、はずしてしまうこともある。先日も、この雨乞岳で遭難騒ぎがあったばかりだ。中高年の単独登山者が道に迷って、一晩山中で過ごしが、携帯電話で連絡がとれ翌日救助されたと、新聞が報じていた。捜索のあとだろうか、黄色地に赤でSHIGA POLICE と印刷されたテープが、ブナの木に巻きつけてあった。
ソロはやめたほうがいい
この日も、何人もの単独行の登山者に出会った。大半が中高年者だった。彼らを見ていて、いつも不安になる。もし、足を滑らせて谷に落ちたら、もし、骨折でもして歩けなくなったら、もし、道に迷って日が暮れたら・・・。
友人のニュージーランド人のガイドが、ソロは危険だ。絶対やめるべきだ、とよく言っていた。もちろん、大半の単独行者は無事に下山しているし、実際に事故あう確率は低い。しかし、単独行の事故は、発見されにくいという、リスクが常につきまとう。特に登山者の少ない山では、発見されるチャンスは少ない。
ひとり静かに山を歩きたいという人も多いだろし、たまたまその日は、ひとりになってしまった、ということもあるのかもしれない。でも、特に中高年の単独登山は、危険だと思う。山では何があるかわからない。
そんなことを思いながら歩いていると、三重大学の山岳部や、名城大学WVの元気なみなさんに出会った。若い人たちが、大きなリュックを背負って歩く姿は、いいものだ。こうでなくてはいけない。
(次回へつづく)
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■著者紹介
中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。
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