- 第46回 -  著者 中村 達


『中高年のロッククライミング』

 夏真っ盛りで、キャンプや登山など、さまざまなアウトドアズを計画されている方も多いことだろう。私も仕事の合間を縫って、どうスケジュールを調整するか、頭が痛いやら、楽しいやらの、ごちゃまぜの日々が続いている。
 時間ができれば、京都にあるアウトドア専門店をのぞきに行き、この夏はどんな様子かいろいろと聞いて回っている。

団塊世代の岩登りブーム
 今年、春先はアウトドア用品はさっぱり売れなかった。不況でSARSで、イラク戦争で、・・・買い控えがあったようだ。ところが、夏になって、特にクライミング用品が売れるようになったらしい。ハーネス、カラビナ、シュリンゲ、ヘルメット、クライミングシューズなどがよく売れている。この種のものは、ここ10年はさっぱりだったが、最近になって、売れ出したという。その理由は、かつてのクライマー、つまり、団塊の世代の岩登りが再現しているからだという。昭和40年~50年代は、日本の山登りは絶頂期で、多くの登山家や愛好家を輩出した。彼らは国内外の山々や岩壁を登りつくした。
 しばらく、山から遠ざかっていた彼らは、時間的な余裕もでき、健康のためにも、生きがいのためにも、かつて体験したクライミングを楽しみ始めた。これがブーム再然の理由だと思う。ただし、トップロープといって、あらかじめザイルをセットしておき、落下をしても安全が確保できるようにしている。
 だが、このロッククライミングも、やはり若者たちの参加は非常に少ない。クライミングウォールが各地にでき、それなりの人気はあるようだが、大きなムーブメントにはほど遠い。
 出張先でも時間があれば、アウトドアズの専門店をのぞいて回ることが多いが、やはり若者たちの姿は少ない。中高年のクライミングブームは、結構なことだが、岩壁に取り付いているのは、中高年ばかりでは、ちょっといただけない。

部員50名の高校山岳部
 今年のトム・ソーヤ企画コンテストの入賞作が発表された。全国から多数の応募があった。そこには、子どもたちに、より良質な自然体験活動を推進しようという、真摯で熱心な姿が見えた。この子どもたちが、岩登りとは言わないが、何かしら継続したアウトドアズを体験してくれればと思う。
 私の娘が入った高校には山岳部があり、部員は50名もいると、県の教育機関誌にあった。
 インターハイも常連だそうだ。それを見て、少しはほっとした気分になった。

(次回へつづく)


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■著者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。