  
- 第32回 - 著者 中村 達
「日本カワガキ復活運動」
作家、立松和平さんに、この自然体験.COMで『私の自然体験』を連載していただいている。その中で、「絶滅危惧種『日本カワガキ』」というのがあった。
カワガキ、つまり川で遊ぶ子どものことだ。ほんの一昔前は、河川で遊ぶ子どもの姿は、何処にでも見ることができた。パンツ一丁で、淵に飛び込むガキどもや、近くの川で雑魚が採る子どもたちの姿は、ごく日常の風景だった。私が住んでいた京都の真ん中でも、ドジョウが手づかみで採れた。近所のガキ大将が、蒲焼にしてみんなに食べさせていた光景を、いまでもはっきり覚えている。
川は危ないとみんなが言った
しかし、いまでは河川は、堰堤ができ、コンクリートで護岸が固められ、子どもたちの姿は消えてしまった。国も社会も学校も、それに親たちも川は危ないからと、子どもたちを河川から遠ざけた。
河原に下りると、いろいろな発見がある。まず、堤防の上から見るのとは視角が違うので、風景が全く変わって見えることに驚く。季節ごとに川の変化を、肌で覚えることができる。水の色が変わったことも感じるだろうし、空が広いことも実感する。
なにより、毎年釣を続けていると、川虫や水面を飛び交う虫が減っているなどと、環境の変化も感じる。もちろん、生活ごみが散乱した河原に、怒りも覚える。
この感じ方が、子どもたちにとって、大変重要なことだと思う。体験学習の場として、良くも悪くも川は、大切なフィールドである。
「ウミガキ」「ヤマガキ」「モリガキ」復活運動
だから、子どもたちを川に還す運動のようなものが必要だと考えている。
それが「カワガキ復活運動」だ。各地の自治体の関係者に、ことあるごとに話をしているのだが、反応は非常にいい。国も関心がありそうだ。
なんとなく、みんなが元気が出るような、自然体験推進ムーブメントが必要だと思う。
この際、「ウミガキ」「ヤマガキ」「モリガキ」復活運動もあっていいんじゃないか。どうだろうか?
(次回へつづく)
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■著者紹介
中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。
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