- 第21回 -  著者 中村 達


「スキー場が消える」

 今年は例年になく雪が早い。上高地は大雪で道路は、一時通行止めになったそうだ。気象庁の長期予報は暖冬だったが、・・・異常気象ということなのだろう。
 そんな具合だから今年のスキーシーズンは、雪不足の心配はなさそうだ。

営業的にあきまへん
 しかし、幕張にあったザウルスは廃業だし、昭和39年にオープンした京都の比叡山の人口スキー場も、先日、40年あまりの歴史に幕を下ろした。このスキー場には、私も何度となく通った。京都市内から数十分でスキーが出来るので、仕事を終えてからでもナイタースキーを楽しめた。私の友人などは通年パスを買って、毎日のように通っていた。比叡山の山頂直下にある猫の額ほどの人口スキー場だが、短いリフトもあって休日などは長蛇の列で大混雑だった。
 このスキー場も不況というか、スキー人口の激減なども加わって、ついに営業が立ち行かなくなった。理由を経営者の京福電鉄にたずねてみると、「そうでんにゃ。さびしいですわ。営業的にあきまへん。」と、無念そうなこたえがかえってきた。

スキー・スノーボーダー人口は1600万人?ホント?
 比叡山の人口スキー場ややザウルスだけでなく、国内にあるおよそ650ものスキー場も、その多くが経営不振である。理由は不況とスキー人口の激減、なかでも若年層の急激な落ち込みである。レジャー白書によると、スノーボーダーと合わせたスキー人口は、1,600万人だそうだが、実感としてはとてもそんな多くはない。おそらくその半分ぐらい、というのが実際のところではないかと私は思っている。
 スキーは、経済の高度成長とともにブレークして、バブルの頃の『私をスキーに連れてって』や『見栄スキー講座』で最高潮に達した。スキー場は3ヶ月だけで1年分の収入を稼ぎ出すという、まさに売り手市場のいいビジネスだった。正月や連休の宿泊施設は、常連サン中心で、新参者などは、まったく受け入れてもらえなかった。
 ところがここ数年は、12月に入っても正月の予約に、かなりの空きが目立つ。
 平成3~5年をピークにして、いわゆるスキー客の入りこみは、減少の一途だ。特に長野冬季オリンピックの後は、その傾向がいっそう顕著になった。

スキー修学旅行で、スキーが嫌いになる
 スキー不振の原因はいろいろあるが、不況の他に、スキーは『高い、寒い、まずい』などのネガティブなイメージがある。これは、売り手市場だったバブル時代の反動だ。そして、最近とくに言われているのが、スキー修学旅行で、子どもたちがスキー嫌いになったということだ。子ども時代にスキーが嫌いになると、大きくなってもスキーはしない。だから若者たちのスキー離れがすすんだ。これは、スキー界の指導的な立場の人からも出ている話しだから、かなり深刻な問題だ。
 文部科学省の役人からも、スキーの指導がまるで授業の延長で、偏差値教育みたいだという指摘があった。それに、すべての子どもたちが、スキーを好きになるというのは、思い違いだと・・・。
 しかし、スキーはなんといっても冬のアウトドアアクティビティとしては、最良のものの一つだと思う。子どもたち、若者たちがスキー場から去っていくような国は、やはりおかしい。

(次回へつづく)


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■著者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。