- 第18回 -  著者 中村 達


「まだ使える廃校は1500校」
理科を学んでいない小学校の先生が増えた?
 この4月から学校が週5日制になって、自然体験活動へ参加する子ども達が増えたという。日本を代表する自然学校の代表の話しだ。募集企画の参加者が、昨年は年間600人だった生徒が、今年は1000人を超える勢いだという。休みが増えたので、参加しやすくなったそうだ。
 休みには学力低下を心配する親は、子どもを学習塾に行かせるわけだが、一方で自然学校に向かわせる家庭もあるわけだ。

 学力低下なんて起こらない、という小学校の校長先生の話も聞いた。この先生は教育委員会を説得して、学校として自然体験を積極的に行っている。平日に2泊3日で、自然体験学習を実施している。どんぐりの苗木を植えて、森をつくっているそうだ。子ども達が大きくなったころには、森が出来ている。その森を見せたいというのが先生の願いだ。
 休みが増えたからといって、子どもの学力が低下する心配はない。むしろその校長先生の杞憂は、理科を学んでいない先生が多くなったことだそうだ。教育相談や心理カウンセリングなど、不登校児を出さないための勉強、あるいは、英語会話などを教えられても、花の名前は教えられない、木の名前は知らない、虫の名前がわからない、という先生があまりにも多いという。つまり、自然についての知識や経験が、根本的に不足しているわけだ。これでは、生きる力を子ども達に教えられるわけはない。

まだ使える廃校は1500校
 一方で、国民的な余暇活動といえば、全体としては観光型から、自然体感型のレジャーへと移行しているわけだが、現実的に不況によるリストラなどもあって、勤労者の有給休暇取得率は大変低い。仮に勤労者が有給休暇を全て消化すると、12兆円の経済効果と、150万人の雇用創出ができるという、試算もある。
 そうなれば、斜陽といわれているオートキャンプ場も活性するかもしれないし、全国にある1294のオートキャンプ場では絶対数が足りないと専門家は指摘する。

 また、少子化と人口の高齢化で、全国各地で廃校が続出している。なんと3000以上もあり、そのうち老朽化や倒壊せず、まだ使用できるも廃校は、およそ1500あるそうだ。なんともすさまじい数字である。これらの廃校の多くは、地方の自然豊かな過疎地にあるわけだから、自然学校や国民のアウトドアズのための施設として利用してはどうか、という話しを聞いた。

 週休2日をどう使うか、ハッピーマンデーに何をするか、自然体験型学習やレジャーをどうするか、学校は、企業は、行政は、そして生活者は・・・ようやく歯車が少しずつ動き出した。
「第8回アウトドアズ産業教育研究会の発言より」要約

(次回へつづく)


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■著者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。
通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。