![]() ![]() ![]() - 第13回 - 著者 中村 達
「冒険プログラム」
2つの事業とも「冒険」が主要なテーマであり、他の応募企画とは趣が少し異なっていた。「冒険」の定義は論議のあるところだが、両団体に共通している点は、参加した子どもたちが、自らの手でプログラムを企画することだ。それに、移動距離が長い。環境冒険国際キャンプは環境教育をとり入れながら、50kmの距離を歩き通した。途中、日本百名山の一つである雨飾山を越えた。通常、この山に登るには、標高約1000mの登山口まで車を利用するのだが、このプログラムでは最寄りの駅からすべて歩いた。下山後は、炎天下の道路を一路日本海を目指して歩きつづけた。これは熟練した大人でも結構つらい旅だったろう。
実施の詳細は、いずれ報告書としてこのサイトで公開の予定だが、日本アウトワード・バウンド協会の現場責任者、梶谷耕一さんは「子ども達に機会を与えると、どこまで行くのかと思うほどの可能性をみせてくれ、それは大人が考える範囲を超えている」と語った。 廃校を借り受けた同協会長野スクールの装備庫には、数多くの冒険のための道具・用具が保管されていた。使い古されたMTBのタイヤは、完全に擦り切れていた。梶谷さんは「私達は消耗しきるまで、徹底的に使います」と胸を張った。安全を最優先にしながら、冒険教育に情熱を持ちつづけるというのは、本当に大変なことだと思うが、時代が彼らの活躍を要請していると思う。
白馬八方尾根を歩いた。リフトの終点は観光客でごった返していた。標高2000m近い第1ケルンには、タンクトップ姿の若い女性や、サンダル履きのカップルなどで溢れていた。特別に高山植物に関心を持つわけでもなく、山の名前を覚えるといった風でもない。 冒険プログラムで出会った子ども達や、観光客と同年齢であろうスタッフ達とのあまりにも大きな落差に、戸惑いを隠せなかった。 (次回へつづく)
■バックナンバー ■著者紹介 中村 達(なかむら とおる) 1949年京都生まれ。アウトドアプロデューサー・コンセプター。 通産省アウトドアライフデザイン研究会主査、同省アウトドアフェスタ実施検討委員などを歴任。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサー。 生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。 |