![]() ![]() ![]() 著者 木谷 尚史
一口に「自然体験活動」といっても非常に幅が広く、必要な用具・道具について、これと特定できない部分が有りますが、ごく一般的な活動をイメージし、活動のための装備・服装についても一緒に考えましょう。 特に装備・服装については、同じ品名でも状況によって質や機能が異なることがありますが、ここではその事も考慮し、ある程度条件を想定しながら選びました。なお、原則として技術が要求される活動(カヤッキング、ロッククライミング、MTB、パラグライダー、ラフティング、登山、スキーなど)の装備・服装については割愛させていただきます。 具体的な用具・道具(装備・服装)を考える前に、活動する環境や状況について考えてみたいと思います。 四季による区分(春・夏・秋・冬)、活動エリア、条件による区分(山・高原・森・川・湖・海・日帰り・1泊・2泊・・・)、地域による区分(沖縄・九州、四国・本州・北海道)分けが出来ます。 日本は、四季によって気象が大きく変化するうえ、南北に長いために北の北海道と南の沖縄では、環境や気象の大きなずれがあります。したがって用具・道具(装備・服装)も、組み合わせによって変わってくる事を念頭においてお読みください。 さらに、下記の条件を満たすことが大切です。 (1) 快適な「自然体験活動」が出来るものであること (2) 安全に「自然体験活動」を行う為のものであること (3) 緊急事態を想定し、それに対応できること 上記の区分や条件を考慮しながら、参加者として、また指導者としての視点で必要な用具・道具(装備・服装)を考えてみます。 1.日帰りの自然体験活動のための用具・道具(装備・服装)について
・ベスト:素材はナイロン又はポリエステルが多い。ポケットが沢山付いているので、使い方によっては機能性が高い。ベストは有れば便利。 ・ジャケット&パンツ:風雨・風雪から身を守る衣類で、生地は同じくナイロン又はポリエステル 素材が主流である。夏期は不要に思えるが、キャンプ泊を伴う場合は、朝夕必要になります。雨具ほどの防水性はないが、撥水性はあり、非常にコンパクトになり、持ち運びが容易である。雨具で代用も出来る。 ・雨具(上下セパレーツ):高い防水透湿性(ゴアテックス等)が主流をなしている。ただ、日帰りの自然体験活動では必ずしもゴアテックス素材でなくてもよい。重ね着する場合があるので、少し大きめのサイズを揃えると有用である。 <はきもの>
帽子の主な役割は、強い日差しから頭部を守ることと、寒さから頭部を守る事である。 ・強い日差しから頭を守る帽子は、一般的にはポリエステルと綿の混紡素材のものが多い。ツバの広いものがよい。 ・寒さから頭を守る帽子は、ウール製が良い。耳まで被う帽子ならなおよい。 <持ち物> ・必ず必要な物(共通装備):ザックまたはデイバッグ(20~30リッター、テント泊がある場合は30リッター以上)、ヘッドランプ(含予備電池)、水筒(1リッター、ペットボトルでもか)、サングラス(UVカット、冬はゴーグル」、SOSホイッスル、手袋(冬はウール素材、冬以外は化繊素材)、タオル、時計、ナイフ、バンダナ、トイレットペーパー、ビニール袋(40リッター)、ライターorマッチ、弁当、非常食(行動しながら補給できるもの。チョコレート、あめ、チーズなど)、 身分証明書、健康保険証 ・あれば便利な物(共通装備):携帯用ラジオ、筆記用具、防虫剤、双眼鏡、カメラ、細ひも(3mm・3m程)、携帯電話、裁縫用具、サイドバッグ、喫煙する人は携帯灰皿、ストラップ(眼鏡・帽子用) 自然体験活動をする上で、上記装備以外に必要な物、また有れば便利な物 ・自然観察:鳥、花、魚、動植物観察・・・双眼鏡、図鑑類、スケッチブック、色鉛筆、絵の具、星座表、ルーペ ・川遊び体験:源流探検、魚捕り、川の生き物調べ・・・地図、網、水中眼鏡、小さいビニール袋、タッパー、ルーペ ・森林体験:枝打ち、下草刈り、間伐、ログハウス作り、ツリーハウス作り・・・軍手、なた、鋸、鎌(枝うち用)、縄 ・里山体験:炭焼、山菜狩り、キノコ栽培、薪作り、工作・・・軍手、ビニール袋、なた、鋸、槌、スコップ ・食農体験:田植え、稲刈り、蕎麦打ち、郷土料理作り・・・軍手、調理用具、材料、長靴 ・歴史文化:伝承物作り(門松、やしょ馬、しめ縄)、古道散策・・・参考書、地図 ・冒険体験:ロッククライミング、沢登り、MTBなど、ソロ(夜1人で寝る)・・・軍手、着替え、運動靴 ・クラフト体験:自然素材のアート作品、わら細工、木彫、押し花、山つる・・・参考書、彫刻刀、絵の具、鋸(小)、鎌 ・飼育体験:畜産農家で牛馬豚鶏などの世話・・・軍手、長靴 ・果樹園体験:剪定、消毒、摘花、受粉、袋がけ、収穫・・・軍手 ・植樹体験:雑木林を作る、木を植える・・・軍手、鍬、スコップ、鎌 活動に必要な大道具は現地に依頼するか、指導者が準備すること。なお、特定の地域で体験を計画する場合は、事前にその地域の役場の観光課や、関連する経験者・専門家と連絡を取り、場合によっては案内・指導を受けることが望ましい。 2.宿泊を伴う活動のための装備・服装について 野外泊が伴う活動の場合は、その為の装備・服装が必要です。個人装備と団体装備が有りますが、団体装備はリーダーもしくは指導者が準備する必要があります。 <宿泊の為の装備・服装> 個人装備:シュラフ(必要に応じた保温性のあるもの)、マット。新たに購入する場合は専門店で相談のこと。 共同装備:テント、ぺグ、フライシート、グランドシート(参加者数、季節、キャンプサイトを考慮のうえ選択) あれば便利な物:ランタン、ローソク <調理の為の装備・服装> 調理用具:コッフェル、ガスバーナー(予備ガスカートリッジ)、食器(プレート、カップ、スプーン、フォーク、箸)、ポリタン、包丁、点火用具(ライター、マッチ)、食料品 3.指導者(リーダー)の装備 参加者は必要ない <マップリーディング> コンパス:一般的に使われているシルバーコンパス 地図:活動周辺の観光地図のほか、国土地理院発行5万分の1、並びに2万5千分の1の地形図 <緊急時の装備> 救急用品:傷バン、テーピング、包帯、湿布薬、薬品(消毒液、痛止め、解熱剤、目薬、化膿止他)、三角巾、体温計、衛生用品、レスキューシート、三角巾、はさみ、救急ハンドブックSOSホイッスル:見通しが悪いときなど便利 <緊急時の為の情報> 緊急連絡先:救急病院、警察、の場所並びに連絡先、周辺の交通機関並びに時刻表、参加者の連絡先(自宅、勤務先) 以上、用具・道具・装備・服装について書きましたが、装備・服装については少し慎重すぎると思われるかも知れません。 しかし、どんな状況下においても快適に、かつ安全に活動をするための必要最小限の装備・服装だと思います。はじめに書きましたが、地域・時期により突然の風雨や、風雪に見舞われることもありますので、装備・服装を揃える際は、専門店で十分に相談し、TPO(いつ何処でどんな事を)に適したものを、そして、身につけるものは、試着し、自分のサイズに合った物を購入してください。 なお、将来本格的にアウトドア活動をされるつもりでしたら、少し質の高いもの(例えば保温性の高いものとか、防水性の高いものとか、耐久性がよいもの・・・)を揃えることも必要です。その事も含めて専門店でご相談ください。 特に、服装等は聞き慣れない素材の名前が多いかと思います。素材も日進月歩開発され、より着心地がよく、軽く、安全で、環境にやさしい、そして安いものが追求されております。 メーカーによって呼び方が異なりますが、良く耳にする素材(ブランド名)について、簡単に特性などを紹介します。 ・ゴアテックス(ブランド名)・・・防水透湿性素材 ・ダクロン(ブランド名)・・・ポリエステル混紡素材。速乾性・洗い易い ・クールマックス(ブランド名)・・・ポリエステル素材。吸汗・速乾性・抗菌防臭 ・ストレッチ・・・ナイロン、綿、ポリウレタンなどの混紡。伸縮性がある。 ・ドライライトテック(ブランド名)・・・ポリウレタン素材。超軽量・防水透湿性・耐久性・ドライ感 ・ウイックロン(ブランド名)・・・ポリエステル素材。吸水拡散性・通気性 ・バイサーフェイス(ブランド名)・・・伸縮性・撥水性・吸湿発散 ・シンサレート(ブランド名)・・・ポリプロピレン、ポリエステル素材。薄く暖かい素材・保温性 ・キャプリーン(ブランド名)・・・ポリエステル素材。吸湿発散・撥水性・保温性・速乾性 参考までに下記のURLをご覧頂ければ、装備・服装については一層詳しい資料が得られると思います。 シューズ ![]() ![]() ショップ ![]() メーカー ![]() ![]() ![]() <資料・主な装備・衣類の標準的な価格帯一覧>
■著者紹介 木谷 尚史(きたに たかし) 1939年兵庫県村岡町生まれ 現在日本アウトワード・バウンド協会の事務局長並びにOBS長野校の校長を兼務。 専門は通信工学で1939年東京のコンピュータ会社に就職。が過酷な労働条件とめまぐるしいコンピューター開発による人間性喪失に疑問を抱き、信州に逃げこむ。脱サラのはしりであったが、大自然の中で、青少年を育む活動に生きる道をさぐり、青春をかけ現在に至る。 主な役職は、日本野外教育学会、日本キャンプ協会、自然体験活動推進協議会各理事。 著書は共著で「社会と環境教育」1993年東海大学出版会 |