~12兆円の経済波及効果と150万人の雇用創出
経済産業省サービス産業課長 熊谷 敬


I.なぜ今「休暇問題」か?
 ・新たな経済活性化策への模索
 ・時間のシステムを変える
 ・休暇改革は「コロンブスの卵」
 ・ワークスタイル・ライフスタイルの変革

II.日本の休暇の何が/どこが問題か?
1.年次休暇は十分取得されていない
 ・年次有給取得率は「5割」~失われた「4億日」の自由時間
  資料(1)労働者1人平均の年次有給休暇の推移
 ・国際水準との格差
  資料(2)ILO条約および諸外国の年次有給休暇制度等に関する状況
 ・細切れの休暇取得
  資料(3)昨年の長期休暇取得実績

2.休暇取得の大きな「格差」
  資料(4)年次有給休暇取得の企業規模格差

3.取得時期の「集中」
  資料(5)我が国休暇取得時期の集中状況

4.年次有給休暇を妨げる「構造要因」
  資料(6)有給休暇を取得しにくい理由

5.長期連続休暇の取得時期
  資料(7)昨年度の取得実績
  資料(8)取得を希望する時期

6.連続休暇中の活動
  資料(9)昨年度の活動実績
  資料(10)連続休暇が取れたらしてみたい活動

III.休暇の経済効果
  「年次有給休暇」の完全取得が実現した場合の経済効果は
   経済波及効果 11兆8千億円
   雇用創出効果 148万人
  資料(11)休暇の経済効果

・鉄道会社A社
 大手鉄道会社のA社は、事業の性質上高い安全性の確保を求められる企業である。「年休もとれない業務態勢下では、安全な運行管理は不可能」との視点から、同社では十分な代替要員の確保や管理体制を整備し、年次有給休暇の計画的取得を推進している。この結果、平成12年度の年休付与日数は19.8日、取得日数18.2日、92%という高い年休取得率を実現した(ヒアリング結果より)。
・自動車メーカーB社
 高い企業業績を誇る自動車メーカーB社は、年休付与日数20日、取得日数は現業部門19.4日、事務部門17.7日と、年休取得率も高い。
 同社は我が国のQCサークルの先端的な実践企業であり、同社役員によると、このノウハウが休暇管理にも活かされているということである、取得促進のため具体的に採用しているのは、3連続休暇の取得状況を「スマイル・マーク」で表すという仕組みである。マークは「晴れ、曇り、雨」の3種類あり、80%以上取得した部署は「晴れ」となる。現在、ほとんどの部署が「晴れ」マークになっている(ヒアリング結果より)。
・石油精製業C社
 石油精製業のC事業所では「従業員にたっぷり休養をとってもらった方が生産性が高まる」という基本的考え方をとっている。高い生産性を維持するには、一人一人のメンタル面の安定が重要であり、そのためにはできるだけ休みを自由に使ってもらおうという趣旨である。
 ただし交代制勤務部門97%、支援部門69%、管理職45%と部門別にバラツキがある。管理職は休みを申告しない場合もあるので、実態はもう少し高いと見ている(全国労働基準関係団体連合会「年次有給取得推進好事例マニュアル」2001.3より)。

IIV.年次有給休暇取得促進の課題と政策アプローチ
1.年次有給休暇取得促進のために何をすべきか
 (1) 制度面
 ・年次有給休暇を促進する使用者の関与や努力を促す仕組みをつくる
 ・休暇の連続取得を保障する

 (2) 意識・環境面
 ・個人における休暇意識の転換
 ・企業における休暇環境の整備
 ・学校における欠席に対する意識の転換

2.3つの政策的アプローチ
 (1) 休暇管理徹底による年次有給休暇取得の促進
 ・「年休プラン(仮称)」策定の促進
 年度始めなどに使用者が労働者の希望を聴取するなど、事前に個人毎「年休プラン(仮称)」を策定し、使用者がこの計画策定に努力するべき旨制度化することを検討する。
 ・取得状況をチェックする仕組み作り
 計画的な休暇取得と取り残し防止のため、「休暇残日数の通知」への取り組みを促進し、また「年次休暇取得状況の労働基準監督署への届出」の制度化を検討する。
 ・年次有給休暇の連続取得の促進
 「年休プラン」を策定する際、使用者は「最低1労働週以上の連続した休暇」をとれるような体制を整備するよう努める旨、制度化することを検討する。
 ・「病気療養休暇」の新設
 短期間(3日以内)の病気・怪我等に対して、健康保険制度とは別に、企業独自の私傷病休暇制度を設けることを検討する。

 (2) 「家族で楽しめる休暇」の実現
   ~こどもに係る新しい休暇制度
 ・学校の長期休暇の分散(「秋休み」の創設)
 学校の長期休暇の時期を地域別に分散させることにより、家族のバカンス時期をずらす。具体的な時期については、例えば秋休み(10月頃)などが考えられる。
 ・こどもの「遊休」=「リクエスト休暇」の創設
 年に数日の範囲で、家族の要請により、こどもが出席扱いのまま任意の時期に休暇をとることができる「リクエスト休暇」を創設する。

学校2学期制の動向
 最近、我が国でも「学校2学期制」に向けた取り組みが活発です。例えば、仙台市では本年度からいち早く2学期制を導入しました。4月~10月の第2月曜日までを1学期、10月の第2月曜日の翌日から翌年3月までを2学期とし、この間に学年始と学年末休業、夏季、冬季の休業のほか、新たに秋期休業日(10月第2月曜日の翌日及び翌々日)を設けたのが特色です。このほか、大阪市教育委員会では市立の小中学校(計428校)で03年度から、金沢市でも04年度からの導入に向けて検討が進んでいます。

 (3) 休暇取得のきっかけづくり
 年次有給休暇を取得しやすい環境づくりのために、下記のような新しい有給の取り方を提案する。
 ブリッジホリデー
 ハッピーフライデー
 オータムホリデーウイーク
 アニバーサリー休暇
 リフレッシュ休暇 など

 以上3つの施策について、現行の労働法制だけではなく、総合的な法制度(バカンス法(仮称))の制定も視野に入れた取り組みが必要。
 さらに、経営者、労働者、政府の代表等による「休暇制度改革推進本部(仮称)」などの組織において、施策をより具体的に推進していくことが必要。

(表題の報告書より抜粋)


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