著者 高橋 博


ファミリーキャンプ
 オートキャンプの普及により、キャンプはファミリーで行くものという事がすっかり定着しました。ゴールデンウィークや夏休みのキャンプ場は、ファミリーで満員です。
 しかし、多くのファミリーキャンパーは雑誌やマスコミから得た知識で山のような道具をキャンプ場に持ち込み、キャンプ生活は快適かもしれないけれど、それを持ち込みまた片付けることにうんざりしているのが現状です。今のように1泊か2泊のキャンプに、あれだけの道具を持ち込めば何度も出かける気にはならないでしょう。
 折角ファミリーでキャンプに行くのなら、視点を変えて家族全員がそれを体験学習的にとらえキャンプだから得られる何かを見つけましょう。それなら、きっとお父さんお母さんにも、また子どもたちにも心に残る体験となるでしょう。

1.キャンプ地選び
a)キャンプ場
 ほとんどの人がファミリーキャンプは、キャンプ場でやります。そこでキャンプ場を選ぶ時は、ファミリー皆で相談しては決めてはいかがでしょう?
・どうしてそのキャンプ場へ行くのか?
・途中に何か見るもの、体験できる事があるのか?
・キャンプ場で何ができるか?
・キャンプ場の周辺には何があるのか?
等を相談しましょう。
 その時、親が子供に教えるという形ではなく、みんなで一緒に考える事が大切です。ファミリーでキャンプに行って楽しかったけど、どこへ行ったのか知らないというのはチョット淋しい話です。地理を知る事もいいし、歴史を知る事もいいのではないでしょうか?
 もしキャンプ場周辺の状況が良く分からない時は、事前にキャンプ場に聞くのもいいでしょう。あるいは、地元の役場の観光課に問い合わせるのも良いと思います。意外と親切に教えてくれるものですよ。

b)キャンプ場以外
(1)安全
 最も大切な事です。自然災害、特に天候の変化による災害から安全を確保できる事が必要です。キャンプ場の場合はこの部分を管理者側に任せていますが、自分で判断しなくてはなりません。雨、風、雷などに対し対策が出来ていなければなりません。もちろん、危険と感じたら撤収する事も大切な事です。一応自分で考えて安全だと思っても、地元の人に聞く事が出来れば必ず聞きましょう。そこに住んでいる人しか知らない事もあるはずです。

(2)環境
 他人の土地では許可がないとキャンプは出来ません。我が国では、キャンプする事を基本的には禁止していませんが、地域によっては条例でキャンプを禁止しているところもあります。その場合、キャンプがなぜそこで禁止になったかを知ることも大切な事です。
 自然環境は、絶対に汚してはなりません。焚き木を拾い、かまどを作り調理をするのは自然なキャンプとして考えられていますが、決してそうではありません。焚き火をした後は何年間も焼き焦げたあとが残ります。それに川原や草原にある焚き火の跡は、景観という大切な自然環境を破壊しています。来たときよりも美くしくして帰ることが大切です。 
 そのためには、どうすればいいかを皆で考えましょう。キャンプ用コンロを持ち込んで、それによって自然環境を壊さない事も必要です。限られた土地に数多くの人が入り込むと、必ず自然は破壊されます。何が自然破壊になるのか、ファミリーで話合えるといいですね。

2.キャンプ地
a)キャンプ場に着いて
 ファミリーでキャンプをする場合は、ほとんどがオートキャンプ場です。多くのオートキャンプ場がサイトを区画で分けていますので、指定されたところでテントを設営することになります。しかし、フリーサイトのようにどこに張っても良いキャンプ場もあります。 この場合は、雨が降ったときとか風が吹いた場合に大丈夫かどうか調べましょう。もし、分からなければ管理人に聞きましょう。そして、体験としてどういう場所がいいのかの見分け方をみんなで覚えましょう。手引書にはトイレからの距離などが記されている場合がありますが、近くがいいか、遠くてもかまわないか、それは個人の自主判断です。このあたりが良いと思うところで決めればいいでしょう。

b)キャンプ場周辺
(1)周辺環境
 キャンプ場の周辺環境も調べましょう。周辺に見るべきところや、学習できる場所があるか、あるいは自然に親しめるような場所があるかなどは、キャンプ場で管理人に聞けば分かる事です。自然環境だけではなく、美術館等も調べてください。
 私は、地方に行ったらそこの郷土資料館を見ることにしています。大変面白いし、そこに行けば教科書で学んだことが一気に頭の中に入ってきます。キャンプをする場合、キャンプ場が全てとは考えないで、その周辺環境を是非考慮してください。例えば、畑に出来ている野菜をじっくり見るのも良い体験です。学べる事柄は、探せば一杯あるはずです。

(2)散策
 周辺を散策するだけでも色々知る事ができます。スーパーの売り場では全く季節が分からなくなっていますが、キャンプ場近くの畑ではその季節のものがなっているはずです。
 自然のものは、土もついていれば虫も食っている、汚れが全く無いスーパーでの野菜や果物を見慣れていると子どもたちやお母さんには汚く見えるかも知れませんが・・・。

3.キャンプ場で
a)テント設営(撤収)
 テントの設営や撤収は、キャンプの中で最も大変な仕事です。ファミリーみんなの協力のもとに出来るにこしたことはありません。でも、お父さんお母さん、子どもたちに設営協力を無理強いしないでください。
 確かに早く手伝えと言いたくなる気持ちは分かりますが、ここでガミガミ言われると折角のキャンプのスタート(終了)が気まずいものになります。子どもたちは、お父さんの後ろ姿を見ているものです。てきぱきとテント設営をするお父さんの姿は、きっと頼もしいものに映るでしょう。子どもたちには、彼等の出来る仕事を考えてやらせましょう。決して無理強いしないで・・。
 キャンプは民主主義的では出来ません。リーダー(ボス)が必要です。しかし、軍隊ではありません。ファミリーキャンプのリーダーは、命令だけではダメです。リーダーとして模範を示し、子どもたちやお母さんに「うちのお父さんはなんと逞しい!」と思わせなければなりません。優しさの中にも逞しさを持ったリーダー、それがキャンプのお父さんです。難しいぞ! でも、そんな親父を示す事が出来るのも、キャンプだからです。

b)調理
 キャンプでは持ち込んだ食材で調理しなければいけないような感覚でいますが、決してそうではありません。キャンプ場近くへ食べに出かけることも一つの体験です。お母さんにとっては嬉しいことです。もし、地元の産物を食べられれば、ファミリーにとって貴重な体験となります。あの地域はこういう食べ物があった、これは一生忘れません。キャンプでは自分で調理をするのがあたりまえなのだと、インスタントものだけで食事をするのはすこし淋しい感じがあります。

c)トイレや水場
 今では水洗トイレはキャンプ場でもあたりまえになって来ました。そうでないとキャンパーが来ないからです。しかし、ほとんどのキャンプ場は、下水は下水道につながって流れていくのではありません。我が国は、そこまで下水道が整備されていません。浄化槽で処理をしているのですが、ピーク時には処理がしきれないこともあります。水洗トイレは使用している人には清潔ですが、キャンプ場のようなところでは決して自然に優しいとはいえません。どのようになっているのか、チョット調べてください。
 水場で油物を大量の中性洗剤で洗っているのはよく目にする光景ですが、それがその先どこでどう処理されるのかを知るのも良い体験です。それを知ったら、きっと大量に洗剤を使うことも油を流す事もしなくなると思います。また、流しっぱなしで使っている水にも注意するようになるでしょう。特に、分解するのに長時間を要する合成洗剤の使用は止めましょう。

4.キャンプ活動
 1泊2日のキャンプの場合、テントなどの設営と撤収、夕食と朝食作りと片付けで全てが終わります。出発する翌日などは、7時頃から朝食を作り片付けないとチェックアウトの時間までに撤収が出来ません。とても、忙しいです。
 これでは、とにかくキャンプに行ったというだけで終わってしまいます。最近はチェックアウトを延ばしてくれる所もでてきましたので、キャンプ場に聞いてみましょう。でも、出来ればキャンプは2泊はしたいですね。そうすると、真中の一日はのんびりとキャンプ生活が楽しめます。

a)キャンプ場で
 多くのキャンプ場がカルチャー教室やイベントをおこなっています。これに参加するのも、キャンプ生活を楽しくさせるものです。しかし、何もやらないキャンプ場もあります。こんな場合やキャンプ場イベントに参加しない時などは、ファミリーで楽しめる事を考える必要があります。思い切って子供たちにナイフを使わせるのもいいかも知れません。良く使い方を教える必要がありますが、キャンプで味わえる楽しみの一つです。
 夕食メニューを考えて、みんなで準備をするものも楽しいかも知れません。拾ってきた枯れ木や枯れ葉でヤキイモを作るのも面白いものです。焚き火台を持参すれば、ほとんどのキャンプ場で焚き火は出来ます。焚き火のやり方を皆で覚えてもいいし、お父さんが教えてあげてもいいでしょう。小さな焚き火に炭を乗せて炭火を起こす事を覚えれば、子どもたちでも炭火を起こす事が出来ます。でも、火の扱いには親が充分管理し、注意する必要があります。
 お父さんやお母さんが何でも出来るわけではありません。そんな場合、ファミリー全員でマニュアルなどを参考にして、行うこともいいでしょう。
 キャンプでの活動は、全てが体験です。キャンプほどさまざまな事が体験学習できる活動は他にありません。この体験は、親にとってもまた子どもにとってもきっとかけがえのないものになると思います。

b)キャンパー同士で
 キャンプ場の多くが区画されているせいでしょうか、ほとんどのキャンパーが近くのサイトとは挨拶もしません。これは淋しい事です。挨拶を奨励しているのではありませんが、同じような志向を持った仲間として、チョットお話ぐらいしてもいいのではないでしょうか。
 もし、話が合わないようでしたら挨拶に留めておくのもいいですが、たいていは話が合うものです。「どこかいいキャンプ場を知っていますか?」から始まるキャンプの会話は、気兼ねのない仲間へと発展する事が多いものです。
 人ととのコミュニケーションも大切にして下さい。キャンプの楽しみは、志向を同じくする仲間を持つことで広まり長続きします。いくらキャンプが楽しいと言っても、常に家族だけでしか会話をしないのではそのうち飽きてきます。
 キャンプ場では、仲間を探しましょう。となり近所とは仲良しになりましょう。


■著者紹介

高橋 博(たかはし ひろし)
(株)アウトドア ジャパン代表取締役、オートキャンプ総合情報サイト「アルスネット」企画運営、(社)日本オート・キャンプ協会前専務理事・事務局長、インターナショナルキャンピング&RVショー 総合プロデューサー、ザ キャンピング&キャラバニング クラブ会長
著書に「これが正しいオートキャンプ」(1997年 報知新聞社)など。テレビでは、NHK BS 「オートキャンプ」、NHK「おはよう日本、アウトドア特集」、テレビ朝日「プレステージ」オートキャンプ特集、フジテレビ「話題にアタック」自然大好き!クルマ家族、テレビ東京「地球まるかじり」など出演多数。
また、「オートキャンプ場汚水調査」調査委員長(運輸省)、「グリーンツーリズム」調査委員(運輸省)、 オートキャンプ場管理運営指針」検討懇談委員(建設省)などを歴任。