第62回「トレイル制作話⑤」 著者 村田 浩道


 7月の蒸し暑い中踏査が始まった。意外なことにスタッフからは一様に「こっちの尾根は意外と良い!」という報告が続いた。「な!言っただろう!?」と、想定内の顔で想定外の報告に驚いていた。良いなら私も調査に同行したいので、体験ハイキングと称して関係者、地元有志、登山愛好家の皆さんと一緒にハイキングに出かけた。
 ただ、ハイクだけでは芸がないので、地元の獣害対策と特産品開発もコラボして「野(の)鹿(か)バーガー」(ネーミングは、当地のシンボルである滝と渓流の名前、さらにジビエ的なネーミングにもなっている)というハンバーガーと鯖寿司を森の試食会と称してセットにした。

 スタッフには「自分がいくときだけは知恵を絞るな・・・」と思われているに違いない。現場はスタッフからの報告どおり、非常にきれいで太い尾根が多くあり、古道や文化遺構なども含めて見どころも多い。
 見晴らしが少ないのが残念なポイントだが、トレイルを活用したアドベンチャーツーリズムには良いフィールドだ。しかも林道からのアクセスも良く、短時間でも楽しめるハイキングルートになりそうであった。
 こういう想定外に良い場所が見つけられるのも里山トレイルの楽しいところだ。里山には地域の歴史、食、民族などの文化が色濃く残っており、地域の民族そのままを自分の足で歩いて感じるこれこそがアドベンチャーツーリズムだろう。



■バックナンバー

■著者紹介

村田 浩道(むらた ひろみち)
日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター
NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。
高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。