第52回「デジタルとアナログ情報」 著者 村田 浩道


 あとは、はやはりデジタル情報と、アナログ情報の両方を理解しておくことである。スマホGPSなどもフル活用してもらいたいと思うし、地形図を見る(読む)ということも必要最低限は理解しておいた方が良い。
 天気予報もいくらでも情報がとれるが、その情報は山中の天気なのか、麓の天気なのか。さらに登山指数A,B,Cなどの記載もあるが、その基準はしっかり理解しておこくとよい。そして、複数人で山に入るようにしてほしいと思う。単独は必要以上にリスクを高めてしまうため、地域の山の会(山岳会など)や旅行社、それにガイド付き登山なども活用してもらいたい。

 山岳遭難は一歩間違えばだれにでも起こる危機で、そこかしこに危険は待ち構えている。山での行動は自己責任とは言うが、ご家族はなんとしても遭難者を探し出したいし、何とか無事な状態でと祈っている。その思いに応えるために、多くの人々がリスクを承知で捜索や救助に向かうことを是非とも、知っておいてもらいたい。

 最後に、禅語には【冷暖自知…自ら経験しないと本当にわかったとは言わない】とある。
 経験こそ、自身が信じることができる最も強いツールとなる。多くを経験するために安全はしっかりと担保してもらいたい。“ナマ”の自然界は素晴らしく感動的で、自分が生きている実感やこの先を生きる勇気、そして世の中の法や真理を教えてくれる唯一の場所である。素晴らしいハイキングや自然旅行を楽しんでもらうために、私たちもリアルな情報提供や、多くの方が多様な楽しみ方ができるトレイルの制作などに努めていきたい。
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■著者紹介

村田 浩道(むらた ひろみち)
日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター
NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。
高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。