第49回「そこにある危機」 著者 村田 浩道


 毎日暑い!そのうちに、暑さ寒さも彼岸までの諺も改定が必要になる時がくるはずだと思っている。

 さて、禅寺である我が家は、7月末からお盆準備にソワソワし始め、8月に入るとすぐに怒涛の法要ラッシュが始まって、8月16日までの間は自坊に缶詰状態である。学生の頃から今でもこのスケジュールは変わらず、お盆が終わると大体3キロぐらいは痩せている。
 このコラムを書いている今、暦は既に秋の彼岸に向かっているとこであるが、お盆中に所属している日本山岳レスキュー協会に山岳遭難捜索依頼があった。比良山系での事案であったため、関西の隊員中心に出動依頼があったが、なにしろ隊員は現役ガイド達ばかりで超繁忙期の真只中、私はお盆激戦期間中であった。

 遭難しておられたハイカーは単独山行、70歳代男性。遭難されたのは7月30日で、捜索依頼は8月5日。山中で動き回ってなければ、そして水さえあれば季節的にも生存確率はまだある。何とかして見つけてあげたいという思いは隊員全員同じだが、私含めて多くの隊員は身動きが取れず、モヤモヤとしていたに違いない。それでも何とか4名程度の隊員が繁忙の中駆けつけて、3日間の捜索活動がおこなわれた。

 屈強なガイド達が揃う当協会ではあるが、この猛暑での低山捜索はかなり厳しいはずだ。何しろ登山道を捜索するわけではなく、遭難した日の天候、遭難者の年齢、経験などから、行動パターンを考えて道なき道を捜索するから、この酷暑の中では体力消耗は激しく隊員たちもリスクが高い。
 我々の協会はボランティアで捜索するわけではないので、リスクよりも発見を優先に行動することになるが、2次遭難は絶対に避けなければならない。今回は参加できなかったため、捜索にあたった隊員には感謝である。しかし残念ながら3日間の捜索では手がかりを見つけられず、ご依頼も打ち切りとなった。
※画像はイメージです。



■バックナンバー

■著者紹介

村田 浩道(むらた ひろみち)
日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター
NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。
高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。