第47回「JAPAN TRAIL」 著者 村田 浩道


 京都では3年ぶりの祇園祭りが開催され、いよいよ夏の本番がやってきた。やっぱり関西では祇園祭の山鉾巡行が終わる頃に、本格的に梅雨明けとなるようだ。近年の梅雨末期の豪雨被害も心配ではあるが、自然の中での遊びを提供している私たちにとっては、最も忙しい季節となる。

 先日、久しぶりに夏の荒島岳に登ってきた。標高は1,523m、福井県大野市にある別名「大野富士」。霊峰白山と同様に、泰澄大師の開山とされる日本100名山である。ブナ林や花も多く人気の山である。
 今回は某旅行社からの依頼で20名をガイド3名でご案内してきた。蒸し暑く日差しも強い日になり、まだまだ身体が熱順化していない時節には厳しい登山になった。チョイスされた勝原登山口は、旧勝原スキー場をゲレンデトップまで登り、そこからいよいよ本格的な登山道となる。標高差1,200m以上の階段や急登も多いハードなルートだ。お客さん達は、出だしの旧ゲレンデを登り切っただけで、登頂したかの様な大汗で息もあがる。
 夏山シーズンとは言うが、個人的にはやっぱり山は雪がある頃が良いと思った。途中ササユリやブナ林に癒されながら、なんとか中間地点の「シャクナゲ平」までやってきた。
 この何とか平って方々にあるが、その名前の由来になったであろうモノが多くある場所は少ないのではないか?ここのシャクナゲ平も、そう、シャクナゲなんかない・・・おそらく昔はあったんだろう。

 さてこの場所、なにを隠そう6月16日に構想が発表された「JAPAN TRAIL」ルートの一部なのである。お客様の中にも数人ご存じの方がいらしたが、日本を縦走する沖縄から北海道までの歩く旅の道である。今回このシャクナゲ平から山頂まではJAPAN TRAILルートを登るのである。不思議なもので何度も登ったことがあるルートも、新たなコンセプトのもとで登ると、なんだかワクワクする。お客さんも同様で、この道が沖縄から北海道まで続いているのか・・・!!と。期せずして、JAPAN TRAILを歩けたことに、とても嬉しそうな笑顔であった。このJAPAN TRAIL提唱は、日本のアウトドア文化と日本人のライフスタイルに新しいページをつくっていくことを実感した一日となった。



■バックナンバー

■著者紹介

村田 浩道(むらた ひろみち)
日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター
NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。
高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。