第39回 「トレイルと私②」~今、トレイルが良いと思う理由~ 著者 村田 浩道


 私とロングトレイルについてのこれまでは、前回に記述したとおりである。現在は各地で整備計画のあるトレイルのご相談を受けることも少なくない。そこで、私が今ロングトレイルを整備した方が良いと思う理由について少しお話ししたい。

 2015年のサミットでSDGsという国際社会共通の目標が定められ、今日よく耳にするようになった。その前身であるMDGs(8つの目標)というものもあったらしい。これは2000年に同じくサミットで定められ、2105年に目標達成の期限を迎えたため、新たにSDGs目標が定められたということだそうだ。
 そのSDGs目標は2030年までに達成すべきとなっている。私は専門家ではないのでSDGsそのものについてはコメントできないが、トレイルには少なからずSDGs目標達成への効果があると思っている。

 自然の中を歩いたり、山を登るということの一番大切で肝要な部分は、自らリアルに体験するということである。冷暖自知の言葉のように、暖かいか冷たいかは自分で体験しなければわからないのである。先ずは自分の国の自然の中で、雨に濡れ石を踏み、山や森の匂い感じ、美しさと厳しさを感じ取ることで、自然への敬意や畏怖の念が生まれる。
 そこにはどれだけ大切なものがあるのか、そこに我々はどれだけ負荷をかけているのか。このような発見や気づきは、リアルに体験することで自ずと学べるはずである。人間が生きることができるのは、文明を発達させたからではなく、我々の足もとに豊かな自然環境があるからに他ならない。この発見や気づきがあるだけでも、陸の豊かさを守ろうという直接的な目標はもちろん、気候変動や海の豊かさ、健康、住み続けられる街等々、多くの目標と合致するはずである。
 さらには、トレイルの特徴である地域の異文化に触れることで、食の大切さや地方の高齢化問題などにも直面して考察することができ、解決へ向けたアイデアや志が生まれるきっかけとなるはずである。

 今日、新型ウィルスによって世界中が混乱し、さまざまな価値観や生活様式まで変えざるを得なくなったなかで、余暇活動にはアウトドアがもてはやされている。しかし、キャンプ場にはごみ問題や焚火放置問題が起きるなど、なんともお粗末な状況も聞かれる。
 みんな入口までは来ている。しかしリアルな体験が足りないから、自分の行動のその先に起こることが想像できないのである。この状況を何とかするには、トレイルしかないと真面目に考えている。まさに10年前にカッコいいと感じた『トレイルづくりは国のグランドデザインをつくる』ということなのだ。
※画像はイメージです。


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■著者紹介

村田 浩道(むらた ひろみち)
日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター
NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。
高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。