第26回 「コロナ下の山岳ガイド業」著者 村田 浩道


 この状況でも自分自身で前を向かないと、本当に沈没してしまうのが自営の辛いところ。山岳四団体の声明文やガイド協会、山岳医師からの情報なども収集して、何とかゴールデンウィーク後には、業務が出来るようにしたい。
 そんな中で、今度は山小屋の利用についての問題がでてくる。物資の運搬、水や寝具などの状況を考えれば、なかなか厳しいのが現実。多くの山小屋がこの時点で、5月6日までの休業を選択されたが、その先も厳しい状況になりそうだ。
 八方ふさがりの様子になってきたガイド業界。窮地に追い込まれて、まぁとにかく考えたが、この状況では打つ手無し・・・お客様のご様子を伺うことぐらいしかできなかった。

 5月に入り持続化給付金の受付が始まり、多くのガイドが申請をしているなか、申請に記入する業務内容に山のガイドにあうものがなく、その他のサービス業の中でもその他にしか分類されないと、多くのガイドから聞いた。国内のガイド業の現実とはこの様なものだ。山岳ガイドはまだまだ世間的には認知されておらず、社会的なステイタスなど、語ろうにもほど遠い状況だと改めて思い知らされる。
 どの業界でもあることかも知れないが、自分達はその業界にどっぷり浸かっているから、何となく登山人口は多く、ガイドの仕事もある様に感じてしまう。しかし、現実は全く正反対。レジャー全体からみれば、僅かなニーズを別け合っているようなもので、自分のガイドとしての需要などは、あっという間に消えて無くなるのではと、いささか陰鬱な気持ちになりがちである。
※画像はイメージです。



■バックナンバー

■著者紹介

村田 浩道(むらた ひろみち)
日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター
NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。
高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。