第23回 「自然の本質」著者 村田 浩道


 「自然は、偉いね。自然が法じゃ」これは私が永平寺で修業中、当時の永平寺猊下であった宮崎奕保(みやざき えきほ)禅師の言葉である。当時、辛い修業の日々をおくっていた私には全くピンとこなかったし、山などは楽しむ対象であって、法だとか言われても・・・
てな状況だった。
 ふと、この言葉が思い起されたのは、庭の蠟梅が咲いたときである。いつもは1月10日ぐらいに咲きはじめ、2月中旬ぐらいまでが見頃となるのだが、今年は昨年末には蕾が膨らみ正月までには咲いていた。
 うんうん。今年は例年になく暖冬だから当然か、と簡単に片づけた後に。んん・・・当然なのか?その時の状況によって柔軟に対応して美しい花を咲かせる。毎年毎年なんの迷いもなく季節が来たら花を咲かせ、必要に応じた分だけ地面から栄養をとり、役目を終えたら何の疑いもなく花を散らす。その一連の流れの中で、我々に美しい姿と香りを分けてくれる。そのことについても全く意図することはない、結果的に我々が楽しませてもらっているのである。なるほど~‼これを禅師は伝えたかったのか。

 規則正しい大自然の法則の中で、それをまねて人間が暮らす。人間の考えだけに任せたら、自然の法則は無くなる。つまり法がなくなり、我々は生きづらくなる。これは大自然が我々に伝えている教えの真理であり本質なんだと。

 宗教染みたお話になって恐縮ではあるが、地球という大自然のなかで、山をメインフィールドに活動をしている我々が、自然と人間のかかわりを伝える上で、文化や趣味に関することだけでなく、人間としての生き方の本質に迫るものだということも伝えられれば、この地球上に、私たち人類が幸せに生活していける場所を未来に繋いでいけるのではないかと考える。プロガイド、コーディネーターを名乗るのであれば、その分野のサスナビリティについてより深く考察して、社会に貢献していきたいものだなぁと、庭に咲く蠟梅を眺めながら考えた。
 永平寺から戻って25年近くも経った今年の春に、チョットわかった気分になった。



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■著者紹介

村田 浩道(むらた ひろみち)
日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター
NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。
高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。