第22回 「見えない強敵」著者 村田 浩道


 今年も春がやってきた。いくぶん早いおとずれで、山野草も桜も1週間から10日ぐらい早いといった感じだろうか。この冬は雪不足で頭を悩ませて、その分早い春の訪れに期待をしていたものの、次は新型コロナウィルスなる強敵が現れた。この強敵は世界中の経済活動どころか、私たちの生活そのもののスタイルを変えてしまいそうな勢いで、テレワークやWebでの授業、Webパーソナルトレーニングなどもこの事態から急速に広まりそうである。

 さて、我々ガイドへの影響も徐々に広まりつつある。土曜日の昼間にこのコラムを書いているのも、週末のガイド業務がすっかりキャンセルになってしまったためである。ただ、今回もギリギリの入稿になる予定が、余裕をもって入稿できることになるので怪我の功名と言うのだろうか?
 仲間のガイドたちも大変な様子で、現在の世情では致し方無いのではあるが、お客様の山へのモチベーションは低く、GWの予約もすっかり無くなってしまったガイドも少なくない。
 残雪期であるこの季節は多くの山小屋が、GWからの小屋開けのために入山し、水源の確保から除雪、清掃、必要物資搬入など多くの業務に追われる。そして我々ガイドがお客様をご案内し、山小屋の皆さんと協同して春の山旅を楽しんでいただくというのが例年だ。

 しかしこの春はどうだろう、さすがにテレガイドとはいかないし、私自身も先行きが全く読めない、当然お客様にも不安があるはずだ。これではキャンセルが相次ぐのも仕方ない。山野草が咲き、桜が咲き、芽吹く里山。残雪と岩肌のコントラストが美しいアルプスの山並み。この春はお客様と共有できない風景になるのだろうか。自分の力では何ともできないことに悩み苦しむのは意味のないこととは思いながらも、考えずにはいられない日々である。

 一方で、自然のなかに入ることで免疫力が高まるとのエビデンスもある。混雑、機密とは正反対の空間であり、心の解放と「歩く・登る」ことで運動不足解消にも繋がる。手軽なところから、近所の山地里山を見直すとよいのではないだろうか。この事態終息後には、「歩く旅」を基調に「自然を楽しむ」「自然を尊ぶ」ことがより身近なものになり、それぞれのライフスタイルの中に根付いてゆくと良いと考える。



■バックナンバー
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山岳ガイドの四方山話 29

■著者紹介

村田 浩道(むらた ひろみち)
日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター
NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。
高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。