第21回 「山仲間」著者 村田 浩道


 お蔭さまで、私にも顧客と呼べる数十名のお客様から仕事をいただいている。それぞれのお客様に、それぞれの山への想いがあり、仲間への想いがあり、そこにはドラマが生まれる。
 先日も、いつもは4名様でご依頼いただくグループだが、昨年春ごろに、メンバーお1人のご主人が体調を崩され入院された。当然看病のために山からは遠ざかることになり、ご主人の入院前から計画していて、大変楽しみにされていた大キレット縦走も不参加となった。人一倍仲間の調和に気を配る方だったので、自分が参加できないことで山行計画を中止にしないでほしいと、仲間へのメールもあった。他のメンバーも複雑な思いの中での山行となったが、参加できなかったメンバーが、日ごろの看病で疲れた気持ちを少しでも前向きになるように、たくさんの風景写真を送ったりして、励ましの気持ちを伝えていたのが印象に残っている。

 そのお客様のご主人が昨年末に退院されることになり、お祝と看病お疲れ様の意味をこめて、年明けに北八ヶ岳への登山を計画した。ほぼ一年間山から遠ざかっていたこともあり、不安が大きかったことと思うが、仲間と談笑しながら登るうちに登山の感覚も取り戻し、しんどかった看病の日々の心労も解けてゆく様子だった。元来非常に明るい性格の持ち主なので、「次は北海道だ‼」などと、すっかり元のペースに戻った様子であったが、ご主人の入院当初は様子もあまり良くなく、心労が重なって体重もかなり減ったようだ。その様子を知った仲間が皆で計画して、六甲山へハイキングに誘ったり、一緒に食事へ出かけたりしていたようだった。北八ヶ岳の登山も、この仲間のチームワークがあって無事に終了した。最後の急登りを必死に登り切って、山頂に立った後の何とも嬉しそうな顔と、それを迎えた仲間の笑顔を忘れることはないだろう。

 山で出会わなければ交わることがなかったそれぞれの人生。山が引き合わせた友情。帰りの車の中で、「山と仲間があるから、これからも頑張れる。これからもよろしく!」とおっしゃった。私のガイディングも一層磨きをかける必要がある。



■バックナンバー
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山岳ガイドの四方山話 2
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山岳ガイドの四方山話 28
山岳ガイドの四方山話 29

■著者紹介

村田 浩道(むらた ひろみち)
日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター
NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。
高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。