第20回 「冬の山歩き」著者 村田 浩道


 今年も雪が少ない、私の地元滋賀県で、もここ2~3年の間でグッと積雪量が少なくなったように感じる。その中でも特に今年は相当少ない上に気温も高く、令和初のお正月も、それらしい雰囲気がなかったように感じられた。
 このままの状況で冬が終わってしまうほど気候は単純ではないと思うが、われわれガイドとしては非常に気を揉む状況なのである。

 そんな中でもこの時期にしか楽しめない美しい自然現象がある。【霧氷】である。これはそれほど標高が高くない山域でも楽しむことができるし、青空に映える霧氷のトンネルなどに出会うと掛け値なしに綺麗だ!と思える景色なのである。
 先日も奈良県の山に霧氷を見に、ガイディングに出かけた。標高1,230mほどの日本300名山だが、この時期は霧氷を見に来られるお客さんが多く、最寄りの駅から臨時バスが出たり、週末には霧氷祭りなるイベントが行われたりしている。私がガイディングした日は平日であったので、駐車場には数台の車しかなかった。お客様は、霧氷を見たことも聞いたこともないと言うので、是非とも見てもらいたくて、この山をチョイスした。

 霧氷とは空気中のごくごく小さな水の粒が、マイナス温度になっても凍結しないで液体のままでいる「過冷却水」の状態で空気中を浮遊していて、それが木の枝や幹などにぶつかった衝撃などをきっかけに、そこに瞬間的に凍結するのだそうだ。だからいつ行っても見れるものでもなく、霧氷があったとしても青空でないと美しさも半減してしまうし、最も大切なことは、できるだけ早い時間に行くということだ。せっかくの青空でも、太陽が輝きだす頃になると、霧氷はバラバラと音を立てて落ちてきたり、蒸発してしまったりもするようだ。

 この日は晴天予報で朝の冷え込みも厳しく、霧氷にはうってつけの条件だった。ただ一つ登山開始が遅いことを除いては・・・。私としては何としても綺麗な霧氷を見せたくて、登山のペースも早くして、休憩もそこそこにひたすら登った。そのうちパラ・・・パラパラ・・・と乾いた音が聞こえてきた。見上げると落ちてくる!薄く付いている霧氷が落ちてきている!お客さんに説明するが、イマイチ綺麗さも伝わらない様子。この先にはメインスポットが待っているが、霧氷はもってくれているだろうか、もう時計は11時頃である。はやる気持ちを抑えつつも、いつもより早足でメインの場所に向かうと・・・「凄い‼こんな景色があるなんて‼」という歓声があがった。そこには何とも美しく、儚い自然の芸術が我々を迎えてくれた。「アナ雪の世界‼」と大興奮のお客様をみて、こちらも凄く嬉しくなった。



■バックナンバー
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山岳ガイドの四方山話 2
山岳ガイドの四方山話 3
山岳ガイドの四方山話 4
山岳ガイドの四方山話 5
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山岳ガイドの四方山話 19
山岳ガイドの四方山話 20

■著者紹介

村田 浩道(むらた ひろみち)
日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター
NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。
高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。