第19回 「続 団体登山」著者 村田 浩道


 さて、18話に続いて団体登山のお話である。多くの旅行業者が商品を山岳域へと広げはじめて、既にかなりの年月が経ったと思う。知り合いの旅行社社員に聞くと、ありきたりの商品では全く集客できないし、かといって他の旅行社が扱わないような、ルートや山域は安全上商品にしにくい。また、安全のためにハーネスを購入することと参加条件に謳っただけでも、参加人数は大幅に減るらしい。

 なかなか斬新な商品開発が難しい中で、昨年の春に長年お世話になっている旅行社から、新しい商品を企画するので協力して欲しいと依頼があった。その商品は初めて登山を始める方や、初心者に向けた講習会形式であるのだが、今までと違うのは3年間という長期スパンで初級講習~中級講習~上級講習までを行い、じっくりと山に向き合うことで、安全に登山を楽しめる登山者の育成を目指すものであった。
 登山客(連れて行ってもらう登山)でなく、登山者(自己責任において登山を完結できる)を育てること。そして、3年間という長期期間が設けられることに賛同して、この仕事をお引き受けさせていただくと約束をした。

 さっそく一緒に仕事をするガイド仲間と共にカリキュラムの作成にとりかかった。ウェア類の特性や選び方、必要な道具類の選択方法、登山中の飲食、歩き方(歩行技術)に至るまで、かなり細かなカリキュラムを机上講習、実地研修ともに作成した。ツアー開催に先だって、内容説明会を開き、参加するための必須カリキュラムとして、スタートアップ講座を開催したところ、なんと参加者は180人を超えた。やはりこれからの集客条件は「学ぶ」「体験する」がキーワードのようだ。

 実際にツーに参加いただいているのは、そのうちの90人ほどで、男女比においても変化が見られた。いつものツアーだと女性が大半をしめるが、今回の企画では1/3程度は男性の参加である。予想を超える反応に喜んだが、3年後はどうなっているだろう?参加者人数は徐々に減っていったとしても、3年後には初級講習者~上級講習者までの講習があり、それぞれに何回かツアーが出る。今回のように90名程度の参加となると、1か月に少なくとも3ツアーは出ることになるし、1回のツアーにガイドは2人~3人は必要で、前述のような講習会であるので、経験が豊富なガイドが望まれる。これが初級、中級、上級と開催され、その他のツアーやガイド個人の顧客も考えると・・・「う~ん、登山者の育成も大事だけど、ガイド育成もしっかりとしないと、ガイドが足りないということになるよね!」とガイド仲間と顔を見合わせた。商業団体登山の課題はますます深くなる。



■バックナンバー
山岳ガイドの四方山話 1
山岳ガイドの四方山話 2
山岳ガイドの四方山話 3
山岳ガイドの四方山話 4
山岳ガイドの四方山話 5
山岳ガイドの四方山話 6
山岳ガイドの四方山話 7
山岳ガイドの四方山話 8
山岳ガイドの四方山話 9
山岳ガイドの四方山話 10
山岳ガイドの四方山話 11
山岳ガイドの四方山話 12
山岳ガイドの四方山話 13
山岳ガイドの四方山話 14
山岳ガイドの四方山話 15
山岳ガイドの四方山話 16
山岳ガイドの四方山話 17
山岳ガイドの四方山話 18
山岳ガイドの四方山話 19

■著者紹介

村田 浩道(むらた ひろみち)
日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター
NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。
高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。