第18回 「団体登山」著者 村田 浩道


 いまや多くの旅行会社が山岳域へとその事業を拡大し、多くのお客様(あくまでも登山者とは言い難い)を案内している。何を隠そう私もその事業の恩恵を受けるガイドの一人でもある。この種の旅行商品は山中で何かと物議をおこしているのも確かで、登山道や小屋の利活用で様々な話を聞く。

 先日も鳳凰三山を縦走する際に宿泊した小屋で、受付でトイレの利用についてあまりにあり得ない注意をされるので、そんなお客さんがいるのですか?と聞くと某旅行社の名前があがった。うーん・・・団体心理として1人がルールを無視すれば、それが多くの人に伝染するということなのだろうか。私自身も団体のお客様のガイディングでは、度々肩身の狭い思いをすることもある。特に登山道でのすれ違いなどでは露骨に嫌な顔をされることもしばしばである。団体の先頭を歩くことが多いので、できるだけ爽やかに挨拶して道を開けるようにしている。しかし、下りとなるとこちらが待てば、上りの方には大勢のお客さまの横を一気に登ってもらうことにもなるし、待ってもらえば何十人が通過するのを待ってもらうことになる。
 なのでいつも、こちらは○十人いるのですが、行かれますか?と問いかけることが多い。人気の山域などでは挨拶だけでたいがいの仕事量になる。団体登山ツアーの事故なども大きな問題で、メディアで扱われるような大きな事故以外にも、ツアー登山を甘く見た故のヒヤリハットを見受けることも少なくない。

 半面、山小屋にとっては大きな売り上げにはなるだろうし、登山用具店にとっても一から道具をそろえてくれるので良いお客さんだろう。バス会社などもよいだろうし、われわれガイドの仕事にもなっている。われわれガイドとしては、何とか団体登山のマナー向上と、個人のお客さんとの様々な摩擦を軽減すべく、旅行社と共に講習会を基本とした商品の開発や、団体のお客様の登山意識の向上を図っている。

 国土の7割は山地なのだから、自然環境に与えるインパクトも踏まえたうえで、今後の団体登山商品については、山岳業界、旅行社業界、ガイド業界にとって悩むべき問題だろう。私自身もほんとに微力でしかないが、自然環境を仕事のフィールドとする者の端くれとして、美しい四季がある日本の自然環境を守りつつ、適正な活用を考えて地方活性の一翼を担いたいと考えている。



■バックナンバー
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■著者紹介

村田 浩道(むらた ひろみち)
日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター
NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。
高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。