第17回 「思考とトレイル」著者 村田 浩道


 チルアウト(chill out)なる言葉を聞くことが増えた。もともとは音楽の形式表す言葉のようだが、「のんびりする」「まったりする」「ゆっくりする」などの意味で、アウトドアシーンでも「チルキャンプ」などという使われ方をしている。時間の使い方や身体のリフレッシュだけでなく、ロングトレイルでは思考回路のリフレッシュができそうだ。

 以前から感じていたことだが、山登りの最中にはよく物事の考えが纏まるのである。いろんな人に聞いてみたが同様の意見は多かった。もちろんきわどい岩稜や岩壁、急な登り下りではなく快適に歩ける山道にかぎる。日々の生活の中で、もやもやとした思考は留まることを知らず、特に仕事や人間関係のことになれば、頭の中は混沌としたカオス状態になる。いわゆる「煮詰まる」状態である。

 しょっちゅう煮詰まっている私は、登山中ももやもやと考えているらしく「あ!そうか、こうすれば・・・」と気付くことが多いのである。この状態になる条件を少し考えてみると、暫く一定のスピードで歩ける、危険個所が少ない、自然(木々、鳥の声、風)をしっかりと感じられる。といった条件の基に、歩くことに集中して目の前を通り過ぎる景色や、鳥の声、風に揺らぐ木々の音などは、ただただ受け流すように心に留めず、もやもやとした思考も浮かんだら考え、消えたら追わず、それに執着することなくただ歩いていると、あるとき“ポッと”良い考えが浮かんで纏まるのである。流行りの言葉に乗って「チルハイク」などはどうだろう。


■バックナンバー
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■著者紹介

村田 浩道(むらた ひろみち)
日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター
NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。
高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。