![]() ![]() ![]() 第7回 「観光案内」著者 村田 浩道
あたり前の話だが、山の中をガイディングすることが山岳ガイドの仕事である。しかし、稀にそうでない仕事も舞いこんでくるものだ。もう何年も前のことになるが、先輩ガイドから一本の変わった電話がかかってきた。 「3日後の仕事で、山には入らなくていいんだけど、日程空いてないか?」 なんだか馬鹿にしてんのかと言いたくなるが、ガイドライセンスを取得したばかりでもあったし、何より日程がガラ空きだったもので恐る恐る内容を聞いてみた。先輩の話では、大手旅行社の関西支社から東京本社へ転勤になった方からの急な要請だそうで、そのころ一大ブームとなっていた天空の城「竹田城」を案内しろということだった。 ![]() 勢いで引き受けてしまった。ところで竹田城ってどこにあるんだ?誰の城なんだろう。全く知らない。まずいな。いろいろと考えていると担当の方から連絡があった。 「急な依頼を引き受けていただいてありがとうございます!」ひまだったから仕方ない。パンフレットにはガイド付きの表記はないのだが、Webサイトにはガイド付きと載っていて、お客様からの指摘があったそうだ。とにかく引き受けた仕事だ、しっかりと準備していこう。しかもこられるお客様はきっと歴史好きだ。しかし本当にインターネットってすばらしい。さっそくGoogle先生に全てを教えていただいた。 ![]() ![]() 駐車場からわずかに登り、里山へ入から城へと続く道を歩いた。やがて趣のある石垣が見えると、オレンジ色のジャンパーを着た方たちがチラホラと現れた。背中には“竹田城ボランティア観光ガイド”と書かれている。きっとここ方たちの方が竹田城の知識は豊富のはずだな。ちょっと気まずさも感じながら、付け焼刃の知識でつなぎながら、お客様と場内の石垣の間を登った。しばらくすると、城下を一望できる天守閣の石垣跡へ到着した。 ちょうど穴太衆の技術を引き継ぐ、建設会社による石垣修繕が行われていた。私と同じ滋賀県の建設会社で、この石積みの技術は海外の城郭の修繕などにも使われているらしい。作業を横目に城内を散策して、撮影スポットがある立雲峡へと移動して、今日の仕事は完了となった。 これ以来このようなガイド依頼はないが、少しは役にたてたのだろうか。同じガイドでも、全く違う要領とテクニックが必要だった。大自然の綺麗な景色で癒され、山頂に立てば充実感や感動を得ていただくことができる山のガイドは、豊かな自然環境に恩返しをしないといけないとつくづく感じた。 ■バックナンバー ■著者紹介 村田 浩道(むらた ひろみち) 日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。 高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。 |